横田めぐみさん写真展での奇怪な出来事6

 終戦の日」によせて②

 渡哲也のヒット曲「くちなしの花」(1973年発表)の陰に、ある戦没学生の存在があった。

 この歌の作曲をした遠藤実は、戦没学生であった宅島徳光(のりみつ)氏の遺稿集『くちなしの花』の中の詩の一節をモチーフにして曲をつくってほしいとポリドール・レコードから依頼されたという。その詩とは―
 

  俺の言葉に泣いた奴が一人
  俺を恨んでいる奴が一人
  それでも本当に俺を忘れないでいてくれる奴が一人
  俺が死んだらくちなしの花を飾ってくれる奴が一人
  みんな併せてたった一人……
(宅島徳光『くちなしの花~ある戦歿学生の手記』(光人社NF文庫)P58)

 宅島氏の恋人、八重子さんへの切なる想いが表されている。この一節から水木かおるが作詞し、遠藤実が作曲したのがあの「くちなしの花」だという。これは宮田律さんのFBで知ったのだが、本を読んでみると、自分個人の生と死、恋人への愛と国家への貢献の間で葛藤し思索を深めていくさまに切ないものを感じる。

宅島徳光氏。見習い尉官時代


 「俺自身の未来を、俺は予知することができない。そして、俺は俺であっても、俺の俺ではない。このことは、懸命な君はよく理解してくれると信ずる。最早、私は君一人を愛すること以上に、日本を、そして君を含めた日本の人々を愛している。(略)

 君に会える日はもう当分ないだろう。或いは永久にないかも知れない。

 手向(たむ)けの花にくちなしを約束しておいてよかったと思っている。

 あの花は母も好きだった・・・。」(P21-22)

 

 宅島氏は1945年4月9日、一式陸攻に機長として乗り組んで出撃し遭難死している。

 「今では指輪も回るほど、痩せてやつれたお前のうわさ・・・」
 渡哲也の「くちなしの花」はカラオケでよく歌われるが、こんな背景を知ると、歌いながらじんときてしまいそうだ。

 なお、手記の一部を引用し、美空ひばりが補作詞した「白い勲章」は、船村徹の作曲によって美空ひばりのシングルレコードとして発表されているそうだ。(wikipediaより)

「白い勲章」をうたう美空ひばり

 美空ひばりは横浜大空襲で地獄を見たこともあってか、強い反戦の志があり、広島平和音楽祭で「一本の鉛筆」という原爆と平和をテーマにした歌を感情を込めて歌っている。

 ただ私は浜田真理子のカバーの「一本の鉛筆」が素晴らしいので、こちらをお勧めする。

www.youtube.co


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 「見捨てられた拉致被害者救え」

 多くのメディアが無視するなか、神戸新聞が田中実さんと金田龍光さんへの支援が広がりつつあることを報じた。神戸は2人の故郷だ。

 「2人はともに神戸の児童養護施設で育っており、救出を求めて声を挙げる家族がいない。田中さんの失踪から今年で45年。署名活動の動きが出てきたり、2人を取り上げた本が出版されたりと「見捨てられた」被害者に目を向けようとする輪が広がりつつある。」(リードより)

神戸新聞』8月18日付。荒木和博さんのFBより

 焦点はもちろん、2014年に北朝鮮が2人の生存情報を日本側に伝えたのに、日本政府が北朝鮮のまとめた再調査報告書の受け取りを拒否した問題。

 記事の中では、特定失踪者問題調査会」の荒木和博代表「日本に家族がいる拉致被害者の生存情報でも、政府は同じように拒否したのか」、「とりあえず報告書を受け取り、それから次の対応を考えることもできたはずだ」とのコメント、また同会の岡田和典顧問「家族のいない被害者を政府が見捨てた」、「日本政府が2人の生存情報を受け取らなかったことは彼らにも伝わっているだろう。それを知ったときに2人はどんな気持ちだったろうか」との批判を紹介している。

 田中実さん・金田龍光さんを救え!の声をもっと広げたいと思う。

 この誰も否定できない人道的な主張を、救う会が無視し続けるならば、彼らの目的は拉致被害者を救うことではなく、特定の政治目的(例えば憲法改正などの)のために拉致問題を利用することにあるのではないかとの疑念を持たれても仕方がないだろう。

 (「救う会」や政府の取り組みへの批判としては以下)

takase.hatenablog.jp

 また、「家族会」(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会がこの2人の救出に関して何も声を挙げないことには誰しも違和感を持つだろう。「家族会」は、親族が会に加わっていようがいまいが、すべての被害者の救出をもっとも強く願ってきたはずである。

 「家族会」は、報告書を受け取らなかったことを政府が正式に認めていないから動けないというかもしれない。しかし、「家族会」は政府の機関ではないし、これまで政府に早く成果を出すようにと要請してきたではないか。

takase.hatenablog.jp


  厳しく指摘するのは、2人を見捨て続けていることがあまりに深刻な人道問題だからである。そして、このままでは拉致被害者の救出が一歩も進まず、人々の関心も薄れていってしまうことを深く憂いているからである。

 私は今後も、2014年の報告書受け取り拒否が、日本政府の足を縛り、拉致問題の進展を阻害していることを訴え続けていくつもりだ。

 マスメディアにいる心ある報道人は、ぜひこの問題を取り上げて伝えてほしいと願っている。