放送法解釈問題は森友・加計問題の先駆け

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望星4月号

 

 

 放送法の方針変更をめぐって官邸および総務省の一部の政治家と官僚のやりとりを記した文書について。

 7日、小西弘之参院議員(立憲)が公表した約80枚の文書は(本物の)行政文書であると総務省が認めた。これは安倍政権がメディアに介入しコントロールしようとしたことの「証拠」になる重要な資料だ。文書に記された事実関係をぜひ徹底的に究明してほしい。

政治的公平性は”一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断する”はずなのに・・(報道特集

解釈を変更し、恫喝に出た高市総務相(2016年2月)(報道特集

 ひとり高市早苗総務相が、文書は「捏造」だと言い張って、実態究明を妨害している。高市氏は自分が出席したと記されている打合せが存在しないとまでいう。官僚がなぜ「捏造」する理由があるかとの質問には、「パフォーマンスが必要だったじゃないか」など、荒唐無稽な答弁を行っている。

 先週の土日、TBSの報道特集サンデーモーニングがこの問題を特集した。

 「報道特集」には、この問題に直接かかわる「放送行政を担当していた元総務相官僚」が登場。「行政文書で官僚が意図的に中身を変えるというようなことはあるか?」とのMCの質問に、官僚は自分の身を護るためにも、ねつ造などやるはずがないと否定した。

「(官僚は)後から突っ込まれたりしたときに『ちゃんとこれは逃げられるようになっているかな』と常に考えていました。なので、ねつ造するということが、当然ですけどないですし、それを残すということもないと思います。」

 それはそうだろう。誰かさんのような政治家なら「パフォーマンス」で無いことを有ると言ったり、有ることを無いと言ったりするかもしれないが、官僚がそんなことをしたら命取りになる。

報道特集

 この元総務官僚の証言―

「以前から、放送に対して政治が何らかの影響力を及ぼしたいとか、自分たちにとって都合の悪いことを言ってほしくないとか、そういう意向を及ぼそうという力は感じることがありましたので、こういうことがあってもおかしくはないかなと思いました。」

報道特集

 放送法の位置づけについては―

「(政権が)都合の悪いことを言うマスコミを黙らせたいと基本的には思っていて。ただ、それをストレートに言うことは民主主義国家では当然許されないので、今回問題になっている話は放送の世界で言うと〝憲法”みたいな重みのある話であって、それが簡単に変わるということは絶対にあり得ないと思います。」

 今回の行政文書が示す筋書き通りに、高市総務相(当時)は2015年5月、一つの番組でも政治的公平を判断できると新たな解釈を打ち出し、16年2月8日には政治的公平を欠く番組を繰り返せば放送局に電波停止を命じる可能性に言及している。安倍首相も同年2月29日、「一つ一つの番組を見て全体を判断するのは当然のこと」と国会で答弁している。

 当時の総務省内の変化について、元総務相官僚はきわめて重要な指摘をしている。

「やっぱり官邸の力がかなり強まっていたので、そちら(官邸)の顔色を窺うところは強くなっていったかなと思います。いわゆる安倍政権になっての〝忖度の走り“。この件(放送法解釈問題)をひとつの成功体験として、この話の後に、森友問題(16年)、加計問題(17年)みたいなものが起こっていく。」

 安倍内閣の官邸主導が日本を破壊する一連の事件を起こしていくが、放送法解釈変更問題がその嚆矢になったというのだ。
(つづく)