3月1日は「映画の日」で料金が1100円と安くなる。もっとも私はシニア割引きで同じなのだが。
きのう運動も兼ねて自転車で、うちから10キロちょっと離れた多摩センターの「イオンシネマ」へ。観たのは、先日紹介した映画『ある人質~生還までの398日』。
駆け出しのデンマーク人カメラマン、ダニエル・リュ氏がシリアでISに拘束され、家族らがプロの交渉人を仲介してISとわたりあった結果、本人が帰還した実話をもとにした劇映画だ。
本(『ISの人質』)を読んでから観たので、事実に裏付けられた重みを全編に感じた。どこで撮影したのか、シリアの破壊された街並みなど見事に再現されて臨場感がすばらしかったし、役者もうまい。拷問のシーンは目をそむけたくなるほどの迫真性。とてもよかった。
デンマークは日本と同様、テロリストとは交渉しないという立場なので、対応は家族にまかされた。金額交渉では次々に身代金の額が変更され、最後は200万ユーロ(2億5千万円以上)という高額になった。リュ氏の家族は募金運動を展開して目標を達成、解放することに成功した。
しかし、リュ氏と同房になった外国人たちのうち、7人が処刑され、2人がいまも行方不明だ。生死を分けたのは、身代金を払ったかどうか。リュ氏が解放されたあとにISに拘束された湯川遥菜さん、後藤健二さんも、身代金が支払われず、処刑された。
絶望の中から身代金集めに立ち上がる家族の愛と葛藤、同房の捕虜たちとの友情なども描かれ、劇映画として楽しめる作りになっている。
本では、恋人が拘束期間中に心変わりし、別れたと書かれていたが、映画の最後のテロップで、彼女とよりを戻して子どももさずかったことを知り、ちょっと安心させられた。
リュ氏は解放されたあとも精神的に不安定な状態が続いたという。彼の収容期間は約1年1ヵ月。安田さんは拘束された組織はISではないが、3年4ヵ月である。いかにすさまじい体験だったかとあらためて思う。
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東京出入国在留管理局の収容施設にいる外国人の男性55人と同局職員6人が新型コロナウイルスに感染したことが確認された。
背景には、入管の恣意的な長期収容と収容施設内の劣悪な待遇がある。
本ブログで指摘してきたこの問題、ほんとは大きなニュースにすべきなのだが、なぜか報道が少ない。まさか今国会に提案されている政府の「入管法改正案」を慮ってではないだろうな。
2日の早朝「おはよう日本」で採り上げられていた。
以前から入管の被収容者を取材していた記者に、収容施設内から電話がかかってきたという。
ある被収容者の男性Aは「頭痛い、のど痛い、下痢、胸痛い。みんな自分の命のこと考えるよ・・」
しかし、診療も医療もすぐには受けられなかったと何人もが訴えたという。
別の男性B
「そして担当言った。『あなた何も(問題)ない』」
男性Cも
「普通じゃないですって言ったんですけど。『かぜですね。かぜ薬のんで大丈夫だよ』って」
被収容者が熱などの異常を訴えたのが2月8日。ところが、PCR検査開始は7日後の15日で、そこで5人陽性(うち職員1人)が判明した。私がこれを知ったのが17日の法務省前抗議行動のときだった。
別の男性D
「夜になるとすごい体が熱くって、職員を呼んでも全然来ないんですね。1時間2時間来ない。死んでしまうのかとすごく心配ですね」
NHKからの問い合わせに東京入管からは―
保健所の指導に沿って対策や調査をしている/重症化したら外の医療機関に連れていく/起訴疾患のある2人は既に入院との返事がきたという。しかし・・
入管問題に詳しい駒井知会弁護士は入管の医療体制には問題があるという。以前から病気になっても診てくれない、診てもまともな治療をしてくれない、外のちゃんとした病院に行きたいと言っても、許可してくれないなどの訴えを聞いてきた駒井弁護士は、一般市民と同じように、必要なときにすぐにケアを与える環境が必要だという。
(被)収容者が体の具合が悪く、医師に診てほしいと思ったときには申請書を出す。土日は施設の医師はいない。回答がくるのに数か月かかることもある。外の医療機関に診てもらえるかは施設の医師が許可を出した場合だけだ。
関東弁護士会連合会はさっそく以下の理事長声明を出した。
入管施設における新型コロナウイルス感染症の集団感染を受けて,被収容者の解放等を求める理事長声明
入管施設における新型コロナウイルス感染症の集団感染を受けて,被収容者の解放等を求める理事長声明
2021年2月25日付け出入国在留管理庁の発表によれば,132名の外国人を収容している東京出入国在留管理局において,被収容者55名,職員6名の合計61名が新型コロナウイルス感染症に集団感染したとされている。この感染者数は被収容者の4割にも及ぶ人数であり,同月15日に被収容者4名及び職員1名の陽性者が判明して以降,陽性者は増加を続けている。
感染者に対する迅速かつ適切な医療措置及び収容施設内における感染拡大防止策の実施は必要不可欠であるが,この集団感染の背景にはそもそも国際法違反の無期限収容が存在する。
これまで当連合会は,国際法に違反する外国人に対する無期限収容を廃止すべきであると繰り返し強く主張し,その解放を求めてきた(当連合会2021年1月27日付け「入管法改定案に強く反対するとともに,国際法を遵守した抜本的な入管法改正を求める理事長声明」等多数)。
そして,新型コロナウイルスが世界中に蔓延するなか,出入国在留管理庁は,「入管施設における新型コロナウイルス感染症対策マニュアル(第3版)」を策定した。同マニュアルでは感染防止策として「各室の換気を最大限励行」(同マニュアル51頁)することが求められているが,支援団体には,被収容者から換気が不十分である施設があるとの訴えがなされている。また,支援団体には,集
団感染判明後は感染蔓延防止のために徹底した消毒が不可欠である(同マニュアル48頁,被収容者処遇規則第32条)にも関わらず,被収容者が電話機等の設備・備品に対する消毒を要求しても職員がそれに応じない施設もあるという訴えがなされているとのことである。このような状況は同マニュアルが遵守されていないことに加えて,人身の自由を制限する収容施設としての意識及び対応能力が欠如している可能性を懸念せざるを得ない。
同マニュアル44頁にもあるとおり,新型コロナウイルスは施設内で自然発生するものではないところ,被収容者はその自由が制限されており,感染症に対して自ら自衛することは不可能な状況にある。そのような中で集団感染が発生したことは被収容者やその家族にとり,現在の状況及び今後の収容の安全性に対して多大な危惧及び恐怖を抱かずにはいられないものであることは想像に難くない。
そして,被収容者の中には家族等信頼できる身元保証人がおり,逃亡のおそれのない者も多数いることから,これらの者を収容しておく必要性も相当性もないことは明白である。国際法遵守及び人身の自由に加えて,感染拡大防止の観点からも,陰性が確認された者から順次,早期の仮放免許可や,(再審による場合を含む)在留特別許可によって,収容施設からの解放を実施すべきである。
また,現時点においてもさまざまな事情により帰国困難な者がいることを踏まえて,被収容者の解放後の生活を維持するための対策は不可欠であることから,その生活保障のために就労の許可や公的支援を受けることができるような施策の実施を求める(当連合会2021年1月27日付け「新型コロナウイルス感染症の影響で帰国困難となった外国人に対する公的支援を直ちに実施することを求める理事長声明」参照)。
奇しくも長期収容及び送還忌避対策のための入管法「改正」案が国会に提出されようとしているが,政府法案は,無期限収容等に対する抜本的な解決案になっていないことは上記理事長声明において当連合会が指摘してきたところである。東京出入国在留管理局において,最初の感染者の判明から10日が経過しても感染者が増加を続け被収容者の4割を超過した事実からは,収容施設が自らが策定したマニュアルを履行できず,またマニュアルが想定した事態を超えて感染症対策を適切に実施することができない状態が発生していることが強く懸念され,そのような収容施設での収容を継続すること自体が人権侵害である。
よって,当連合会は,新型コロナウイルス感染症の感染が判明した者に対する迅速かつ適切な医療的措置の実施,陰性が確認された者で逃亡のおそれのない者に対する仮放免許可や在留特別許可による収容施設からの解放を行い,被仮放免者等が生活するための就労許可や公的支援が受けられるような対策を実施することを求める。
2021年(令和3年)2月26日