香港 国安法に屈しない人々1

 年初からのコロナ感染者数が最高を更新していることは大きく報じられているが、卸電力価格が過去にないレベルで急騰、連日最高値を更新していることはあまりニュースになっていない。
 うちが契約している「テラエナジーでんき」から先日、以下のように節電のお願いのメールがきた。
 《電力市場が例年の単価平均の3倍以上という異常な高騰のため、節電のお願いのご連絡をさせていただきました。12月末より市場の高騰が続いており、この数値がこのまま続くと、皆さまの電気料金がかなり高くなってしまう事が予想されます。
 つきましては、可能な限り節電して頂くことをお勧めいたします。具体的には、暖房器具を石油ストーブにしたり、必要のない電気機器を使わないなどが挙げられます》

 「例年の3倍」とは異次元の高値だ。
 寒波で電気の使用量が増えていることと、冬の自然エネルギーの発電量が下がっていること、また液化天然ガスLNG)の在庫が減少したことなどで、需給がひっ迫しているらしい。 

 《7日の供給予備率は関西電管内に加えて四国電力中国電力北海道電力の管内でも4%と最低限必要とされる3%に近い水準で低迷している。(略)
 東日本大震災後に電力供給が不足した時には、政府が大口需要家や消費者に対する節電要請の発令や、大手電力会社による計画停電の検討開始の目安として「予備率3%以下」が基準となっていた経済産業省関係者は、現時点では節電要請の発令については検討していないと話した。》(Bloomberg 7日)

 けっこう厳しいではないか。節電要請はしないというが、菅内閣はいろんなところが「抜けて」いるから大丈夫かな・・。

 うちが今年の夏から契約している「テラエナジーでんき」は、定額料金ではなく「市場連動型」の料金システムを採用していて、電力市場に応じて小売価格が変動するから会社自体は損しない。だから、「お客さんの支払額が高くなるから気をつけて」と注意を促してくるのだが、定額料金で販売している多くの新電力は、この情勢で経営が圧迫されないのだろうか。
 それから、電力需給ひっ迫となると「だから原発が必要」と言い出す人たちがまた出てくるかも。

 なお、「テラエナジーでんき」はお坊さん4人で起業した電力会社で《つながりを大切にする新たな社会づくりに挑戦しています。仏道に生きた近江商人の〈 三方よし~売り手よし、買い手よし、世間よし 〉に〈 未来よし 〉を加えた〈 四方よし 〉の精神を大切にします》というおもしろいところだ。よろしければHPをご覧ください。

tera-energy.com


・・・・・・・・・・・・・

 先日、香港で一斉逮捕された民主派53人の中に、日本に留学中の人がいたことを知った。
 「東京大学の大学院博士課程に留学中の区諾軒さん(33)が、一時帰国のために香港に向かったのは今月5日夜のことだ。
 コロナ対策のため、翌6日未明に一時隔離のホテルに入った。約2時間後、身体を休める間もなく、香港警察の特別チームによって逮捕された。
 区さんは香港立法会の前議員。立法会選に向けた昨年7月の民主派の予備選挙をめぐる言動が、国家安全維持法に違反する疑いがあるとされた。」(朝日新聞10日)

f:id:takase22:20180305090035j:plain

立法会補選に立候補したときの区諾軒さん

 区諾軒(Au Nok-hin)さんは香港で区議を2期やったあと、立候補資格をはく奪された周庭さんに替わって立法会補選に立候補し当選した民主派の政治家だ。去年から東大大学院に留学していたが、香港に戻った直後に逮捕されてしまった。

f:id:takase22:20210111013846p:plain

逮捕直後、ちょっとたどたどしい日本語でツイート。学究の道が閉ざされたかもしれないという。

 53人のなかには米国人の弁護士も含まれており、国安法がいつでも、どこでも、誰にでも適用されることがはっきりした。

 中国が香港の自由を露骨に封殺しようとするなか、香港人はどう思っているのか。
 逮捕された活動家には、あまりの弾圧の厳しさに「今は闘うときではない。状況が変わるのを待つしかない」と考える人も多いという。

 その一方で、「それでも何とかしたい」という思いを香港人同士で共有したいと思う人々もいる。
 最近報道で見かけた「屈しない人びと」を取り上げたい。

 きょうは、ケルビン・モクさん(20)という大学生の「送車師」
 

f:id:takase22:20210107101822j:plain

 「送車師」とは、逮捕されて護送されていく人を励ます人のことだ。

f:id:takase22:20210107101624j:plain

f:id:takase22:20210107101639j:plain

 モクさんは裁判の日程を毎日のようにチェックし、裁判所に行く。この日は禁固8ヵ月を言い渡された人が出てくるのを待っていた。
 「刑が重すぎます。レーザーポインターを持っていただけで8ヵ月です」とモクさん。
 裁判所から拘置所に向か護送車に近づき、中にいる見ず知らずの人に声をかけスマホを向けて激励する。車が走り出すとモクさんたちも全力疾走して追いかけていく。

f:id:takase22:20210107101925j:plain

激励するモクさん

f:id:takase22:20210107101727j:plain

護送車を追える限り走って追う

 モクさんは応援することで、香港人の団結を示したいという。運転手のなかには、少しでも「仲間」といられるようにわざと徐行してくれる人もいるという。

 モクさんはデモが激しさを増していた19年11月、友人と待ち合わせていたとき、警官が15~20人やってきたのでその場を離れようとした。すると警官が急に駆け寄ってきてカバンを調べられた。工具を「違法な所持」とみなされ逮捕、20時間拘束されたという。
 モクさんは逮捕されたが幸い何もなかった。それからはせめて受刑者となる「仲間」を見送りたいと思うようになった。

f:id:takase22:20210107102121j:plain

 「彼らは国安法のせいで不公平に直面しなければなりません。今の状況には怒り、悲しみ、落胆しています。香港が圧力(国安法)に侵食されています。
 抗議の声が爆発した2019年のころに戻れなくても、たとえ小さな活動でもできるかぎり参加します」とモクさんは言う。

 この時期、日本のメディアの取材に、顔も名前も明らかにして応じるというのは大変な勇気がいる。テレビを観ているこちらがひやひやする。
 さまざまな抗議の手段が封じられるなか、「送車師」たちは仲間と団結を確認しあうことで、屈しない意思をおき火のように保ちつづけている。