アメリカでよみがえる「社会主義」2

 立冬になり、東北からも初雪の便りが届く時節になった。
 先月、実家の冬囲いをシルバーボランティアに依頼したので、そろそろ作業してくれているだろう。

 山形では芋煮会シーズンだが、今年はコロナでドライブスルーでやったりしているとのニュースも。
 芋煮会山形県村山地方の発祥らしく、江戸時代は里芋に棒鱈とザッコ(雑魚)を煮ていたという。河原でやることが定着したのが明治になってから。牛肉を入れるようになったのは昭和初期とかなり早い。「牛肉入りで河原で」やるのが正統派ということのようだ。こんなことを書いていたら食べたくなってきた。

 関東でも山の木の葉が色づいている。どこかに紅葉狩りに行こうか。

 7日から初候「山椿開(つばき、はじめてひらく)。つばきと読むが実際は山茶花(さざんか)。童謡「たき火」のさざんか、さざんか、咲いた道の歌詞が思い浮かぶ。
 12日から次候「地始凍」(ち、はじめてこおる)。霜柱はまだ先だろう。
 末候「金盞香」(きんせんか、さく)が17日から。金盞はここでは水仙のこと。
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 おとといの「社会主義」の話の続き。

 アメリカ社会の分断・両極化が激しく進んで、いわゆる中間派が少なくなっているという。
 ビューリサーチセンターのアメリカのイデオロギー変遷調査グラフでは一目瞭然。

www.pewresearch.org

 

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民主党支持者(青)と共和党支持者(赤)の両極化が激しく進んでいる。縦線はそれぞれの中央値。

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こちらは毎日新聞のグラフ

 民主党共和党それぞれの支持者の分極化の激しさは私たちの想像を超える。これを見ると、あの選挙戦で見せた双方の支持者の敵意の強さも納得できるというものだ。
 次期リーダーのバイデン、ハリスは国民の「融和」を前面にかかげるが、大変だぞ、これは。

 アメリカ国民の分断は、共和党支持者の右傾化をトランプが煽ったからだ、と考える人が日本では多いと思うが、グラフをよく見ると、むしろ民主党支持者の左傾化がはなはだしいことがわかる。背景には若者の「社会主義」への支持が急増していることがある。

 いま変動の中核は、ミレニアル世代(1981年~1996年生まれ)とZ世代(1990年代後半~2000年以降生まれ)ソ連という国家が存在したときには生れていなかった人たちだ。そんな若者に変化が起きていることを示すデータがたくさんある。

 2年前、ニューヨーク州民主党から出馬したアレクサンドリア・オカシオ=コルテスが大番狂わせで勝利、史上最年少の女性下院議員となった。

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wikipedia より 現在31歳

 彼女の出身母体はDSA(アメリカ民主社会主義者という左翼団体で、その勢力が急拡大している。
 2016年に6500人だったメンバーが2018年には5万人に増え、その平均年齢は2013年の68歳から、2017年にはなんと33歳まで若返っている。(斎藤幸平「ジェネレーション・レフト宣言」『世界』11月号から引用)
 社会的には超少数派だった高齢者のオールド左翼に替わって、若者がどっと加入して一気に主流になったわけだ。

 「米外交問題評議会」(CFR)というシンクタンクが発行する『フォーリン・アフェアーズ・リポート』は、アメリカだけでなく世界的にも影響力のある国際政治経済ジャーナルだが、今年のNo1号の巻頭論文は「【ポスト資本主義は社会主義ではない】資本主義の衝突~『民衆の資本主義』か『金権エリート資本主義』か」だった。

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 この論文はあとで紹介するが、これから資本主義はどうなっていくのかという本格的な議論が政治エリートのなかでもなされるほど、危機感が募っているわけである。

 以上の変化はアメリカだけの問題にとどまらず、世界の、そして日本の今後を考える上でも重要だと私は思っている。世界をがらりと変えるかもしれない。

 30年前、ソ連・東欧のいわゆる「共産圏」の崩壊で、社会主義にはもう当分は希望がないと思った。もちろんソ連圏や中国が「社会主義」の名に値しないトンデモ体制で、否定されなければならないとは思っていたが、90年代以降、世界ではイデオロギー的には社会主義は影をひそめ、アカデミズムでも「マル経」など化石扱いされるようになっている。
 アメリカの動きに、元左翼の私としては、おいおいちょっと待てよ、何が起きているんだ、と身を乗り出したくなる。

 実は、社会主義の「復権」はアメリカだけではない。欧州でも大きなトレンドになっている。日本はこの波から完全に取り残されているが、とりあえず学びを進めよう。
(つづく)