「持続化給付金」769億円受注の真相を明らかにせよ

 政府のコロナ不況への緊急経済対策として打ち出した目玉事業「持続化給付金」。昨年より収入が減った中小企業等の法人に200万円、フリーランスを含む個人事業主に100万円を上限に現金を支給する制度だ。申請開始後、さまざまなトラブルが発覚しているが、そもそもそのからくりに疑惑が浮上した。

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 以下、『週刊文春』(6月4日号)記事から。
 《この事業を一般競争入札で受注したのは「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」。契約日が4月30日、契約金額は769億円に上る。(略)
 「電通が国の事業を請け負うための隠れ蓑として設立された、実体のない“幽霊会社”だと言われています」(代理店関係者)》

 文春の記者が所在地とされる東京・築地のビルを訪ねると、

 《膨大な業務に追われているはずの協議会のドアは固く閉じられ、人気は全く感じられない。インターホンを何度押しても反応はなかった。》

 この協議会は、経産省肝いりで始まった「おもてなし規格認証」という制度を認定機関として運営しているが、経産省が規格事業の公募を開始した2016年5月16日と同じ日に設立されたという。主導したのは経産省に太いパイプがある当時電通社員だったA氏で、登記簿では理事にA氏のほか電通の関連会社役員二名が載っているという。

 これは電通の利権のためのトンネル法人ではないかとの疑いが出てくる。

 経産省自らが立ち上げを後押ししたもようで、経産省の姿勢も問われる。

 「国が一般社団法人に委託した事業の大部分を電通のような民間企業が請け負っているとすれば、なぜはじめからダイレクトに委託しなかったのか。この点が公明正大に説明できなければ、国民の疑念を招きかねません。営利性のある事業をやらない一般社団法人の場合は非課税ですから、節税の温床になっている可能性もあります」(中央大学法科大学院・酒井克彦教授)

 

 実は、この幽霊法人の問題は、しばらく前からネットでは問題になっており、国会でも立憲の川内博史議員などが追及している。https://twitter.com/cdp_kokkai/status/1265204166986612739

 大問題のはずだが、マスコミの報道が異様に少ない。
 とくにテレビの追及がほとんどない。

 マスコミを牛耳る電通のスキャンダルだからなのか。

 

 東京新聞は6月1日朝刊一面トップで報じた。

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 記事によると、この「協議会」は設立4年でなんと1576億円の事業を経産省から委託されていた。電通は「回答を控える」と取材に応じない。国民のお金である。「回答を控える」はないだろう。

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東京新聞5月28日より

 《国の持続化給付金事業を担う一般社団法人サービスデザイン推進協議会が設立から四年で、同事業を含め十四事業を計千五百七十六億円で経済産業省から委託されていた。うち九件を、広告大手の電通や人材派遣のパソナなどに再委託していたことも判明。残りの五件でも事業の大半を外注していた例があり、法人本体の実体の乏しさがより浮き彫りになった。 (森本智之)
 過去の再委託の事例は経産省が国会議員に示した資料で明らかとなった。法人が再委託をした事業九件のうち、電通グループに七件、パソナには二件と法人の設立に関与した企業を中心に事業を回していた。
 法人の不透明さが発覚する発端となった持続化給付金では、委託費の97%に当たる七百四十九億円が再委託費として電通に流れている。電通が設立に関与した法人から電通に事業が再委託される経緯について、両者はこれまで「回答を控える」としている。経産省は現時点で、持続化給付金以外の事業に関しては再委託費を明らかにしていない。
 ただ、税金の使い道を検証する政府の行政事業レビューによると、電通など五法人が再委託を受けた中小企業などへのIT導入支援事業(二〇一七年度)では、四百九十九億円の予算から、法人にひとまず入った金額の96%に当たる三十七億円が外部に流れていた。過去の再委託でも同様に、法人が事業の大部分を外部に回す手法が目立つ。
 さらに「再委託先はない」と経産省が説明する五件でも、レビューによると法人が事業を外注していた例があった。例えば外注割合はおもてなし規格の事業(一六年度)で68%相当、IT導入補助金(一七年度)では96%に上った。
 再委託と外注は契約形態が違うが、法人が自前で業務の大半を行わず外部に任せるという点では同じ。過去の事業でも法人が税金から得た金額が問題視されそうだ。

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東京新聞6月1日

<持続化給付金事業の再委託> 経済産業省中小企業庁は中小企業などに最大200万円を給付する持続化給付金で、一般社団法人サービスデザイン推進協議会に769億円で事業を委託。この法人はサービス業の生産性向上を図る目的で2016年5月、電通パソナトランスコスモス日本生産性本部などによって設立された。委託費の97%に当たる749億円が、法人からの再委託で電通に流れることが判明。実質的な給付事業は電通が担っているといえ、法人の実体の乏しさが鮮明となった。一方、法人の代表理事は6月8日付で辞職するとしている》(東京新聞

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