WHO総会への台湾参加を中国が妨害

 運動をかねて、よく近所をサイクリングしている。
 私の住む国分寺市の南隣、府中市は古墳の密集地だ。
 飛鳥時代律令制が整うと武蔵国ー現在の東京都、埼玉県に川崎市横浜市をふくむ地方ーに、政治の中心、国府が置かれたが、それが今の府中市で、地名(国府の中心)もそこからきている。
 8世紀には聖武天皇の命により、国府の近くに国分寺が建立されることになる。
 この辺に古墳が多いというのは、国府が置かれる前から栄えた地だったということだろう。

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武蔵府中熊野神社古墳

 武蔵府中熊野神社古墳は、もっともよく復元・整備された古墳で、立派な古墳展示館もある。

 国内最大・最古の上円下方墳(じょうえんかほうふん)で、1段目が約32メートルの方形、2段目が約24メートルの方形、3段目が直径約16メートルの円形と3段築成の古墳。
 造られたのは7世紀中ごろというから、国府が置かれたころか。被葬者は不明だが、HPには「武蔵国府設置直前に大きな力を持っていた人物の墓と考えられます」とある。地元の豪族がたくさんいたわけだ。

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高倉塚古墳

 そこから直線距離で1キロと少しのところにある高倉塚古墳。
 住宅地のど真ん中にあるので、初めてさがしにきたときは迷った。
 上の古墳よりは古く、6世紀前半に造られたと推測されている。ここは多摩川沿いのハケ(崖線)のそばで湧水が豊富だ。周辺には25の古墳が確認されたそうだ。

 昔を想像しながらの歴史散歩は楽しい。
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 18日のWHO(世界保健機関)の総会を前に、米中の対立が強まっている。
 焦点は台湾の参加問題。台湾はオブザーバー参加を求めている。
 中国は、台湾が中国の一部であるという原則を受け入れないことをもって、参加を断固として拒否するとしている。

 台湾は2009年以降、WHO総会にはオブザーバーとして参加してきたが、2016年に民進党蔡英文政権が発足してからは、中国の圧力で招待されなくなった。

 この問題にかんしては、アメリカの下院議員205人が、台湾をWHO総会にオブザーバーとして招くよう求める連名書簡をWHOのテドロス事務局長宛てに送付するなど、さまざまな動きが出てきた。

 感染症対策において、空白地域を作ることはあってはならないし、台湾は今回の新柄コロナ禍では感染抑え込みのお手本だ。台湾では累計感染者が400人台、死者は1桁、プロ野球も開幕している。この貴重な経験は他国にも広く交流され、知られるべきだ。
 きょうの時点でまだ招待が来ていないという。

 保健問題を政治化することは許されない。

 一方、中国が経済をたてにもう一つの国に圧力をかけている。
 オーストラリアのモリソン首相が、今回のウイルスの発生源などを調べるため、独立した調査が必要だと発言したことを受け、中国がオーストラリアの4社の肉製品輸入申請を受け付けないことを決定したのだ。
 オーストラリアの主要輸出品の肉製品の最大の輸出先は中国。これをストップされたらその影響は強烈だ。

 10年前の尖閣諸島での中国漁船衝突事件で、日本に対してレアメタルの輸出をストップしたことを思い起こす。やはり領土問題で、フィリピンからのバナナ輸入を止めたこともあった。

 中国が投資、援助で手なずけた国は多い。欧米などの先進国でも、外交問題で中国を忖度するケースが増えている。この傾向は何とかしないと。
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 その台湾でうれしいニュース。

 このブログでも紹介した、香港の銅鑼湾書店の元店長、林栄基さんが同名の書店を台北に開店した。

takase.hatenablog.jp

 銅鑼湾書店は、中国指導者の汚職やスキャンダル、共産党の人権弾圧などタブーに触れる本を扱っていたが、5年前、店長の林さんら書店関係者5人が忽然と姿を消すという不可解な事件が起きた。その後、5人はいずれも密かに中国当局に監禁されていることが判明した。令状も裁判もなく長期に拘束され、一人はまだ解放されていない。

 この事件は、香港市民を震え上がらせた。
 「逃亡犯条例」(容疑者引き渡し条例)が改正されれば同様の事件が常態化するのでは、との恐怖が改正案反対へと向かわせることになったと言われる。

 林さんは、「条例」改正の動きが出るとすぐに台湾に逃げた。
 もう一度、書店をやりたいとクラウドファンディングで呼びかけると、2000万円を超える資金が集まり、準備期間を経て4月末に開店の運びとなった。

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銅鑼湾書店」台湾の新店舗

 ところが林さんに対するさまざまな妨害があり、開店4日前には、朝食中を3人の暴漢に襲われ赤ペンキをかけられるという事件も起きた。

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犯人3人は捕まったが背後関係は分からないという

 それでも書店は無事開店され、連日多くのお客でにぎわっているという。

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 台湾では「今日の香港は明日の台湾」という標語が広く流布されていて香港への連帯意識が強くなっている。
 中国民主化への小さな一歩だが、応援したい。