新型ウイルス対策は台湾に学べ

 きのうの朝日川柳は新型コロナウイルスをめぐる句でいっぱいだ。

さながらに「二・二七戒厳令(千葉県 真庭 誠)
 2.26事件というのがありましたね。
休校になれば親まで欠勤し山形県 上林光雄)
 例えば非正規のシングルマザーはどうすればいいのか?
縄さえもしどろもどろで綯(な)う手付き広島県 今本正人)
 ドロナワもここにいたれり。
ヤなんだな検査で患者が増えるのが(神奈川県 大坪 智)
 しっかりした検査体制を取れば、もっと感染者が見つかるのでは・・
重症化するまで待てと国の触れ茨城県 鈴木静江)
 センターに相談できるのは、「37.5℃以上の発熱が4日以上続いた人」だけ。
もうすぐ言うぞアンダーコントロール兵庫県 岸田万彩)
 オリンピックが危ないとなれば、そう言うしかない。

 安倍首相、いきなり来週からの休校要請。この措置自体は賛成だが、準備も事前予告もフォローもないままの「政治決断」では混乱を生むばかりだ。いま、政府批判をする時期ではないという声もあるが、あまりに無責任だ。

 『日刊スポーツ』が異例の一面で話題になっているので、買って読んでみた。批判はここに尽くされている。

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    以下がリード。

 《安倍晋三首相は28日、新型コロナウイルス感染拡大阻止に向けて27日に発表した休校要請方針について、最終的判断を各地方自治体にゆだねる考えを示した。一斉休校は自らの政治決断としながら、実際は「丸投げ」文科省は最後まで反対したが、首相が押し切ったことも分かった。結論ありきの対応を押しつけられた国民は怒っている。麻生太郎財務相は、政府の費用負担を問うた記者を「つまんないこと」と一蹴した。感染被害はこの日も全国で拡大。安倍政権に国民を守る覚悟はあるのだろうか。》
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202002280000889.html

 首相は専門家会議の提言を根拠にしたが、会議で一斉休校の議論は出なかったという。
 「対策が後手後手と批判されて、大きく手を打ったのではないか」(厚労省関係者)
 そうとしか考えられない。


 徹夜で対応に追われる教員、「出勤できなくなる」と困惑する子持ちの親たち、休む従業員への手当をどうするか頭を抱える経営者・・政府の無責任がいっそう混乱を招いている。

 一方、イベント自粛を呼びかけた26日に、首相補佐官秋葉賢也衆院議員が地元の仙台市で出版パーティーを開催し、専門家会議が「集団感染が起きやすい」と指摘した立食形式で行った。21日には、首相自ら、お友達の稲田朋美幹事長代行のお誕生祝いに出席するなど危機感ゼロ。

 記事は、《日本が直面する危機から守るべき相手は誰なのか。首相や「お友達」の感覚はすべてが、ズレている》とバッサリ。日刊スポーツに拍手!
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 安倍内閣が新型ウイルス対策で支持率を急落させている(共同調べで8.3ポイント下落)一方で、台湾の蔡英文総統の支持率が“爆上げ”しているという。

 24日に公表された台湾民意基金会の調査によると、支持率は68.5%。先月調査から11.8ポイントも上昇。特に高い評価を得ているのが防疫対策で、75.3%が「80点以上」と回答している。以下、アエラdot.のメルマガ記事より。https://dot.asahi.com/dot/2020022800078.html?page=1

 いったいどんな対策なのか。


1. (対応の早さ)日本では1月16日にはじめて国内の感染者発生が公表されたが、新型コロナウイルスを「指定感染症」として閣議決定したのは1月28日。台湾は感染者が一人も出ていない1月15日の時点で「法定感染症」に定めていた

2. (休校措置)台湾ではすでに学校の休校は原則終了している旧正月春節)の冬休みを2週間延長して24日まで休みにしていたのを、現在は、教職員や生徒で感染者が1人出れば学級閉鎖、2人以上なら学校閉鎖するという基準を設け、授業を再開している。

3. (共働き家庭への配慮)休校中に小学生の世話が必要になる保護者は、看護休暇を申請できるようにした。また、中学生以上でも障害を持つ子供の保護者であれば、同じ制度が適用されるようにした。もし、企業が有給休暇の取得を拒否した場合、法律にのっとって処罰することも表明。
 「休校」という方針だけが発表された日本とは、大きな違いだ。

4. (経済対策)台湾立法院(国会)は25日、600億台湾ドル(約2200億円)を上限とする経済対策の特別予算案を可決した。大きな打撃を受けている観光産業への支援などが柱になる予定だ。
 一方、日本では、28日衆院を通過した20年度予算案には、野党が要求した新型コロナウイルス関連の予算は盛り込まれていない。約3000億円の緊急予算措置を議会に求めた米トランプ政権の真似をすればよかったのに。

5.(ネットを通じた効果的な情報開示)1月後半からのマスクの在庫不足に対応するため、輸出や持ち出し、転売が禁止され、2月6日にはマスクの購入が実名制になり、7日間で2枚しか買えないようにした。そして、台湾国内の薬局にあるマスクの在庫データをインターネット上に公開。民間のITエンジニアがそのデータを地図上に落とし込み、在庫状況がひと目でわかるアプリを開発して無償配布した。
 緊急時に発生するデマ情報の拡散を防ぐため、ラインなどの通信アプリを通じて間違った情報を信じないよう注意するメールを配信。また、新型コロナウイルスに感染しやすいタクシー運転手やバス運転手にマスクが優先的に届くように求める情報を発信すると、フェイスブック上では、本当に必要な人にマスクを譲ろうという声があふれた。

 台湾の新型コロナウイルス発生状況のホームページはグラフや地図を効果的に使用していて、どの地域にどれくらいの感染者が出たかわかりやすい。台湾にも寄港した国際クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客については、下船してから訪れた場所をすべて公開した。

 いやはや、すごいな台湾・・・
 中国との人の行き来が非常に多い台湾だが、28日現在で感染者数がわずか34人に抑えられているという。対策は成功していると言っていい。

 テクノロジーを使用した危機管理に、米国をはじめ世界から注目が集まっているが、実は、こうした神対応”の連発には立役者がいるという。

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オードリー・タン(唐鳳)氏

     《世界から注目されているのがデジタル担当政務委員(大臣に相当)のオードリー・タン(唐鳳)氏だ。タン氏は世界的に有名なプログラマーで、現在38歳。8歳からプログラミングを学び、14歳で中学を中退。15歳でIT企業を起業した。その後にトランスジェンダーであることを明かし、36歳で入閣した時は性別欄に「無」と記入した。タン氏はIQ180ともいわれる天才で、台湾の人々は「彼女の存在は私たちの希望」と慕う。》

 こんな人が閣僚に抜擢されるなんて、日本では考えられない。なんともうらやましい!

 政権の真剣度も日本とは比べものにならない。

 「一般の人々が不安に感じていることについて常に先回りした対応をしていること、そして蔡総統や蘇貞昌行政院長(首相に相当)が寝る間を惜しんで必死に感染症拡大に奮闘している姿が伝わってきます。武漢からチャーター機で帰国した台湾人から一人の感染が確認された時は、陳時中衛生福利部長(保健相)が記者会見で涙を流しながら『患者の数は増えてほしくない。だが、逆に考えると命を救うことができる』と訴え、その真剣な姿に台湾人から称賛の声が相次ぎました」(台湾在住のノンフィクションライター近藤弥生子さん)

 アエラの記事はこう結ぶ。
 《台湾に防疫や衛生管理を根付かせて伝染病の撲滅に貢献したのは、日本統治時代の1898年に台湾総督府で民生長官を務めた医師出身の後藤新平だ。それから120年以上がたった今、立場は逆転した。日本は、感染症の流行対策について台湾に学ばなければならない。
 安倍首相は、台湾政府の爪の垢を煎じて飲んでほしい。