スローガンは「攬炒」(死なばもろとも)

 立派だなと思う著名人の一人に、スピードスケートの小平奈緒選手がいるが、座右の銘についてこう言っている。
 「私『小平奈緒』っていう生き方をしていきたいなと思っているので、『永遠に生きるかのように学べ、明日死ぬかのように生きろ』っていう(ガンジーの)言葉があるんですけど、そういう言葉のようなシーズンを送れたらいいかなと」(2017年4月会見)
    ほんとはこれガンジーの言葉ではないらしいのだが、まあ、それはどうでもい。「日々、自分超え」をモットーに精進あるのみ、失敗してもめげない小平選手の言葉として受けとめよう。

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 「永遠に生きるかのように学べ、明日死ぬかのように生きろ」
 いいですねえ。思い通りにいかないことがたくさん出てきてめげそうになると、こういうスケールの大きな格言が身にしみる。
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 今朝の朝日新聞は社説も川柳も「桜を見る会」と「香港の混乱」だ。

 正体を明かせぬ人を招待し (広島県 今本正人)
 うまい!結局、モリカケもみな日本国はオレのものという公私混同から起きたのだなと納得させられる。
 遅滞なく廃棄するほどヤバイもの (福岡県 牧 和男)
 共産党の田村智子副委員長(参院議員)の追及に安倍首相はボロボロだった。まともな答弁ができず、今日になって「来年は中止します」。幕引きをはかるが、逃がさないで追及すべし。

 内戦の様相帯びる香港島 (東京都 三神玲子)
 警官を強気にさせるお墨付き (兵庫県 岸田万彩)
 たしかに昼間からビジネス街に催涙ガスが漂っておもてに出られない香港はまるで内戦。混乱を招いた警察の強硬姿勢は、今月4日に習近平が林鄭行政長官に与えた「お墨付き」からだ。
 習近平国家主席は林鄭に「中央政府は高度に信頼し、あなたの仕事を十分に評価している」「暴力と混乱を阻止し、秩序を回復させることが香港の当面の最重要任務だ。法に従って暴力を止め、処罰することが香港民衆の幸福を守ることになる」と告げたという。妥協はするな、抗議行動の息の根を止めろと言ったのだ。

 きのうも今日も香港は抗議活動で都市機能がマヒしている。

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金融の中心「セントラル」に集まるデモ参加者や会社員(13日)ブルームバーグより

 《香港の金融街・中環(セントラル)では13日も抗議デモ参加者が集まり、交通に支障を来した。李家超保安局長は同日、暴力が続いた場合は「想像もできない」結果を伴いかねないと警告した。
  デモ隊は香港政府の対応と警察の戦術に対する怒りを示すため、朝のラッシュ時の交通を妨げるよう呼び掛けたことから、列車は始発から混雑した。破壊行為などを受けて東鉄線は全線で運転を見合わせた。多くのバス路線も停止し、複数の学校が休校となっている。》https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-13/Q0VQUHDWLU6I01
 「想像もできない」結果とは?怖い表現である。

 火炎瓶を投げたり、交通を妨害する実力行使に出る若者たちの中には、遺書を書き置いている人も多い。すごいなと思う反面、そんなことをしたら香港の経済も社会もめちゃめちゃになってしまうのではないか、と案じた。
 なぜ、そこまでの行為に出るのか。
 彼らのスローガンに「攬炒」(らむちゃう)という言葉をときどき見かけた。香港の知り合いに聞くと、これは若者の気持ちを表すキーワードの一つだという。
 これは4年前の雨傘運動の時に出てきた流行語でもあったそうで「翻訳道場:香港大專日本語學同學會」のFBには、
《「攬炒」=敵に抱きついて(「攬」)落ちる。意味:共倒れ、自爆攻撃》とあった。
 相手を道連れにする意味で、「死なばもろとも」という訳がぴったりくる。
 香港はこのまま行ったら「中国化」されるだけで、もう失うものはない。死なばもろとも。あわよくば肉を切らせて骨を断つ。というわけか。
 立教大学の倉田徹教授も「攬炒」に注目し、若者たちが、「中国の銀行が呼吸する肺」である香港を破壊することで、北京にダメージを与えることができると考えていると解釈している。
 この言葉を知ってから、香港の若者たちの絶望に裏打ちされた悲壮な決意を少し理解できるように思ったのだった。
 さらに今、「玉砕」という言葉もスローガンで使用されているという。死なないでほしいと切に願う。