周庭さんは判決を聞いて涙を流した

 きのうの『アナザーストーリーズ』(NHKBSプレミアム)「めぐみさん拉致事件―横田家の闘い」はいかがでしたか。

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 再放送は12月10日(木)午前8時からです。お見逃しの方はどうぞ。

 関心は高かったようで、昔の知り合いからも観たとの連絡があったし、たくさんの方々から電話、メール、メッセンジャーなどでご意見、ご感想をいただいた。

 横田家の苦悩がこれまで知られなかった形で描かれ、観る人に衝撃を与えたようだ。「涙、涙・・」「あらためて怒りがこみ上げた」との感想、あるいは「早紀江さんのお友達の存在は、辛い内容の中で、唯一慰めになった」との指摘もあった。早紀江さんのクリスチャン仲間との交流は番組の中核で、ああ支える人たちがいてよかったなと思いつつ、早紀江さんが仲間と屈託なく笑い合っている姿から、また新たな悲しみが浮き立ってくるように感じられた。

 事件を取材したジャーナリストのパートでは、めぐみさんらしい日本人を北朝鮮で見たとの証言を初めて報じた1997年2月の番組も紹介され、私にも当時のことが甦ってきた。

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「めぐみさん目撃」を証言を報じた「ザ・スクープ」の1シーン

 目撃証言のあとは、必死で北朝鮮を追いかけ、その年だけでテレ朝の「ザ・スクープ」と「サンデープロジェクト」で計9本の朝鮮半島ものの特集を制作していた。

 今は10代の若者の多くは拉致事件とは何かを知らないという。
 問題進展の兆しが見えないなか、自分に何ができるかを考え続けたい。
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 香港の周庭さん、黄之鋒さんらとともに禁固刑が言い渡された。彼女、その判決に涙を流したという。国安法のもと、厳罰化も進んでいるようだ。

 《昨年6月に香港政府の「逃亡犯条例」改正案に抗議する警察本部包囲デモを扇動したとして、無許可集会扇動罪などに問われた民主活動家、周庭、黄之鋒の両氏ら3人の公判が香港の裁判所で2日開かれ、裁判官は周氏に禁錮10月、黄氏に同13月半の量刑をそれぞれ言い渡した
 実刑判決は、6月末の香港国家安全維持法(国安法)の施行など中国政府の強硬姿勢の下で強まる民主派締め付け強化の流れを反映したといえそうだ。周氏は法廷内で量刑を告げられると、うなだれたまま肩を震わせ泣いた。》(共同)

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周庭さんたちの護送車に励ましにやってきた若者たち

 11月23日の収監から3日目の25日、周庭さんのツイッターには管理人が、
 「彼女には12人部屋が割り当てられました。精神状態は良く、二晩とも眠ることはできたそうですが、食欲はないそうです」と書いていた。

 11月27日には「今日、周庭に面会に行った日本人の友達が、彼女から日本語で応援してくださっている皆様へのメッセージを預かりました」として、周庭さんの、
 「日本の皆さん、たくさんの人が応援してくれていると聞いて、心が強くなりました。ありがとうございます。
今、私は一生懸命この環境に適応しようとしています。食欲はないけど、食べる努力もしています。乗り越えるためにはエネルギーを蓄えないといけないから。」
 とのメッセージを載せていた。

 29日になると、不眠を訴えている。

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周庭さんのツイッターより

 結局、きょう保釈されずに即時収監で禁固10ヵ月というのだから、彼女も泣いてしまったのだろう。かわいそうに。

 そもそも去年の香港のデモには「指導者」がいない。それを扇動罪で有罪にしてしまった。

 NHKの『ニュースウォッチ9』に、友人の伯川星矢さんが出ていた。彼は私が香港で取材したとき助けてくれた人で、父が香港人、母が日本人。両親の住む香港を離れ、8年前から日本に住んでいる。

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NHKニュースウォッチ9より

 テレビカメラの前で伯川さんはこう語った。

 「ニュースで判決を聞いた瞬間、(周庭氏が)泣いたと聞き、心が痛んだ。
 あまり泣かない彼女が判決を聞いた瞬間泣くというのは、ものすごくショックだったと思う」

 「香港の状況をより多くの人に伝えていき、自分の未来のためにたたかっている人たちがいる。メッセージを日本の皆さんに伝えていきたい」

 「彼女(周庭氏)が出てくるまでにどこまでやれるのか。自分に対しても世界中の香港人に対しても宿題である」
 
 伯川さんの両親は香港在住だ。こんな形で露出して大丈夫なのかと心配になった。将来、香港に帰って逮捕されないとも限らない。やる気になれば中国は誰でもどんな行為でも罪に問うことができる。

 周庭氏への連帯をこめた、覚悟の上での発言なのだろう。彼の勇気に感銘を受けるとともに、中国の自由弾圧に改めて怒りを感じる。
 曲がりなりにも言論の自由をもつ我々がもっと声を上げなければならない。