村木厚子さん「プロセスをオープンに」

 そろそろ大寒だ。初候は20日からで「款冬華」(ふきのはな、さく)。25日から次候「水沢腹堅」(さわみず、こおりつめる)。30日から末候「鶏始乳」(にわとり、はじめてとやにつく)。フキノトウが出始め、氷が張って冷えるが、鶏が卵を産み始める。近所の家に梅の花が開いた。寒さの中に春が近づいている。
 蔵王樹氷が見られる時期だが、樹氷が危機にあると報じられている。3年前ほど前から、樹氷をつけるアオモリトドマツにキクイムシによる被害が広がり、2018年秋の調査では、山頂付近のほぼすべての木で、立ったまま枯れる「立ち枯れ」が確認されたという。こうした地域的な生態系の変化はおどろくほど急に進行するものだ。
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 政府の重要資料がまた消えた。
 厚労省の勤労統計の不正調査問題で、2004〜11年分の資料が紛失や廃棄されていたことが判明。政府の基幹統計に穴が開く異例の事態に発展する可能性が出てきた」(Yahoo news)。
 モリカケ問題はじめ資料や公文書が次々に消えたり改ざんされたりした上に、この始末。もうこうなると、何でもありではないか。


 今朝NHKの「あさイチ」には驚いた。スタジオのゲストが、冤罪で164日勾留された村木厚子さんだったからだ。2009年6月、障害者団体向けの郵便料金の割引制度の不正利用にかかわったとして逮捕、起訴されたが無実と判明。逆に、起訴した大阪地検の検事3人が証拠を改ざん、隠滅した疑いで逮捕、起訴されるという事態になり、検察の「闇」が明るみに出た。http://www1.nhk.or.jp/asaichi/archive/190118/1.html
 村木さんは元厚生労働事務次官。当然、スタジオで厚労省の資料廃棄問題をどう思うかと聞かれた。村木さん、やわらかい話しぶりのまま、ビシッとこう答えた。
 「役所の隠蔽は、悪いことをしようとしてやっているというより、何らかの圧力がかかっていたり、ひずみが背景にある場合が多い。それをなくすためには、外の目を入れてプロセスをオープンにして隠せないようにする必要がある」。
 役所の悪さのウラに何があるのか、誰がいるのかが大事だということだ。元事務次官の言葉だけに説得力がある。朝からNHKが珍しく政府批判しているとSNSでも注目されていた。

 いま日産のゴーン氏の勾留が長期化していることが問題になっているが、村木さんの勾留は5ヶ月を超えるものだった。妻の勾留を支えた夫の太郎さん。
 「5ヶ月が長いのではなく、長いのは終わりが見えないこと。いつ保釈されるのかわからない」と言う。
 長いのは終わりが見えないこと・・・。思わず牛久入管「東日本入国管理センター」に2年、3年と長期に収容されている外国人たちの顔が浮かんだ。
「何よりつらいのが、いつ出られるか分からないこと」と言ったクルド人入所者もいた
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20180801

 名探偵コナンの大ファンで全作読んでアニメも観ているなど、へえ!と驚くようなエピソードがいくつも披露された。
 幼い子どもを抱えて月200時間の残業をこなした。よる子どもを寝かしつけるのに間に合わないときは、カセットテープに昔話などのお話しを吹き込んでいたという。
 いつも微笑んでいる村木さんに視聴者が「なぜ怒らないのか」と聞いた。その答えもおもしろい。昔は部下に厳しかったが、娘を二人持って考えが変わった。二人の性格は全く違う。同じ親から生まれてもこんなに違うのだから、世の中の人たちが違って当たり前。そこから怒らなくなっていったという。

 勾留中、149冊の本を読んだというのもすごい。冤罪で逮捕、勾留された村木さんの心中はいかばかりか。ふつうなら、本など読んでる場合じゃない!、となるところだ。本のタイトルをすべて見せていたが、『100万回生きたねこ』『君たちはどう生きるか』など知っている本も並んでいた。

 私は、村木さんが冤罪が晴れた直後に会ったことがある。場所は私が当時「情熱大陸」で取材していた「無罪請負人」、弘中淳一郎弁護士の事務所だった。時の人だったので、インタビューを申し込んだが断られた。ずっと穏やかな笑顔だったことを憶えている。

 以前からメディアに出ないことで知られる村木さんが、生でテレビに出るのを初めて見た。若い女性を支援する「若草プロジェクト」(http://wakakusa.jp.net/)の共同呼びかけ人、瀬戸内寂聴さんから、活動を広げるために、どんどんテレビに出なさいと言われたので出ることにしたそうだ。
 きょうの放送はとくに若い人たちに大きな反響があり、ツイッターのトレンドにも出たという。今朝は、人柄、見識ともすばらしい村木さんのトークに私もすがすがしい気持ちになった。
 寂聴さんの言うように、これから、どんどんテレビに出ていただきたい。