マスコミと検察の暴走―弘中弁護士

takase222010-10-21

安部医師は、マスコミと検察が共犯で極悪人に仕立て上げられたと言える。
村木厚子さんの事件は、マスコミが検察による証拠改竄を明らかにした(朝日新聞のスクープだった)のだが、はじめ、マスコミは村木さんがクロだという検察からのリークを垂れ流したのだから、マッチポンプである。
村田厚子さんの弁護人こそ、『安部英医師「薬害エイズ」事件の真実―誤った責任追及の構図』の編著者で、安部医師の弁護を引き受けた弘中惇一郎氏(写真)である。
弘中弁護士は、薬害事件を数多く手掛け、医療過誤事件では患者・遺族の代理人をつとめてきた。他の弁護士と研究会も作った。薬害エイズ裁判では、その仲間たちが患者側の代理人となり、患者への裏切りと非難されたという。
当時は、いくらマスコミに安部医師は無実だと説明しても、患者や遺族に同情が集るなか、「わかっているけど、そういう話は書けません」と記者たちは言ったという。(アエラ10月11日号参照)
マスコミ業界にかかわるものとして他人ごとではないし、自分は、例えば「薬害エイズ」事件でも郵便不正事件でも、過ちを避けられたかと自問すると自信がない。
安部医師は血友病の財団を作るために私財をなげうち、早くから非加熱製剤投与にエイズ感染の危険性がある可能性に注目し、加熱製剤の承認に尽力したという。
公判中に88歳で死亡したが、勲三等旭日中綬章を受章した功労者でありながら、「通夜」も「告別式」、「学会葬」も行われず、家族、身内だけでの密葬で済ませた後で死亡を公表したという。
安部医師=極悪人のイメージはいまだに強烈に残っているらしく、この本を出すにあたっても「被害者側からの攻撃のおそれを口にして尻込みをする出版社も少なくなかった」(あとがき)そうだ。
こうした事実を知るにつけ、あの洪水のような報道が、取り返しのつかないダメージを安部医師本人と家族、友人に与えたことに痛みを感じる。
さて、弘中惇一郎氏については、きのう、小沢一郎の弁護人になったというニュースが飛び込んできた。
《「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、強制的に起訴されることになった小沢一郎・元民主党代表(68)の弁護団に、郵便不正事件で無罪が確定した元厚生労働省局長・村木厚子さん(54)(内閣府政策統括官)の弁護人を務めた弘中惇一郎弁護士(65)が加わることが小沢氏側の関係者の話でわかった。
 小沢氏の起訴後、主任弁護人に就任する見通しという。
 弘中弁護士は、ロス疑惑「一美さん銃撃事件」で無罪が確定した三浦和義・元輸入雑貨会社社長(2008年に自殺)や、薬害エイズ事件安部英元帝京大副学長(1審で無罪、控訴審中に死去)らの弁護人を務めたことで知られる》(読売)
小沢一郎の裁判の行方に注目したい。
ところで、安部医師が極悪人に仕立て上げられる過程で、政治家の人気取り発言も大きな役割を果たしていた。その政治家の一人は、今の首相、菅直人である。
(つづく)