スマホを使うマチゲンガ族

 きのうは暖かく上着がいらないほどだった。今年は記録的な暖冬らしい。
 あさってから「大寒」(だいかん)だ。7日から初候「閉塞成冬」(そらさむく、ふゆとなる)、12日からが次候「熊蟄穴」(くま、あなにこもる)、末候「鱖魚群」(さけのうお、むらがる)が17日から。鱖という字は音読みが「ケツ」「ケイ」など、訓読みは「さけ」だという。クマが冬眠に入り、シャケが川を上ってくる「大寒」。暦の上では本格的な冬になる。
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 ラテンアメリカに通っているカーニバル評論家、白根全(しらね・ぜん)さんがペルー大使館の協力のもと、「写真家たちのクスコ−20世紀前半のアンデス写真」という写真展を開いている
 2年前、白根さんはマルティン・チャンビというペルーの先住民写真家を日本に紹介した。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20160430
 今回は、「光の詩人」と呼ばれたチャンビの他、日系二世のエウロヒオ・ニシヤマの作品はじめ日本では初めて紹介される20世紀前半の写真展となる。インカ帝国の首都だったクスコにはチャンビを中心に20人を超す写真家のサロンがあり、切磋琢磨しあって自らの表現を追求していたという。
 このころのクスコは人口2万人だったというから、日本でいうと地方の小さな市くらいだ。そこに20人もの写真家がいたとはすごい。彼らは写真を撮って食えていたのだろうか。


 興味をひかれたのは、ニシヤマが1960年に撮影した「アマゾン源流部ジャングルのマチゲンガ族」。このときが、「文明」のマチゲンガ族とのファーストコンタクトだったという。身に着けているのは木の皮の衣類だ。
 同じ場所のマチゲンガ族を、白根さんは探検家の関野吉晴さん(こないだまで武蔵野美術大学教授)とともに2年前に訪れたという。「そのとき、集落の若者がみんなスマホを使っていたんですよ」と白根さん。ええっ?ほんとですか!我々は人類史に類を見ない激変の時代にいるのだなあ。
 関野さんはマチゲンガ族の「トウチャン」一家と40年も前から交流している。その間の変化をこんな文章に書いている。
 「初めて出会った時、よそ者をほとんど知らず、完全自給自足の暮らしをしてきた彼らの暮らしは大きく変わった。初めて会った時に11人だったトウチャン一家は姻戚を含めると42人になっている。第四世代は近くの村で、寄宿舎に入り、ハイスクールに通っている。携帯電話を持っていた。
 私たち文明世界も激動の時代だったが、地球の裏側の、地球上でも最も自然と寄り添って暮らしている友人たちの暮らしも大きく変わってきた。」(関野さんのホームページ)http://www.sekino.info/?p=204

 地球上に、「近代文明」の波をかぶらない秘境は、もはや残っていないのだろう。これは喜ぶべきことなのか、それとも・・。古い写真がさまざまな思索を呼ぶ。興味のある方はぜひどうぞ。
 12月12日まで。入場無料。会場は「セルバンテス文化センター東京」(東京都千代田区六番町2-9)http://tokio.cervantes.es
月〜土曜日:11時〜20時、日曜日:10時〜12時半
 金曜、土曜の13時以降、随時ギャラリー・トークあり。