中秋の名月に思う

 秋分といえば、ヒガンバナ彼岸花)。これも薬用植物園で撮影したもの。全株が有毒で、「シビトバナの別名があり、誤って食べると(略)死亡することもある」と解説にある。毒草だったのか。ただ、それは人間にとって有毒ということで、自然(宇宙)はそれをよしとして存在させてきたのである。


 こちらはオオケタデ(大毛蓼)。タデ食う虫も好き好き、のタデの仲間。東南アジア原産。江戸時代には、葉っぱをもんで害虫にさされたときの解毒に使ったそうだ。何でもクスリになるんだな。最近のテレビは健康情報ばかりで「ニンニクがすごい」、「バナナの意外な薬効」、「トリの胸肉でスタミナを」などととっかえひっかえ特集しているが、考えてみると結局、薬にも毒にもなるさまざまなもののなかで我々は生きているということである。
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 初めての民間での「月周回旅行」をやるのは日本人になるらしい。その人は、通販サイト『ZOZOTOWN』を運営する前澤友作社長(42)。アメリカのベンチャー企業『スペースX』に予約したとニュースになっている。月旅行は1972年のアメリカ・アポロ計画以来。前澤社長はすでに手付金として100億円以上をスペースXに支払ったとのこと。金額もふくめ、何か別世界のように現実味がない。
 私は数年前、取材で前澤さんに会ったことがある。ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイという会社は千葉県の幕張にある。ここでは「仕事」を「自事」と呼び、「6時間労働制」。空いた時間で農業をやる社員もいた。会社のある幕張を活性化するため近くに住むと月5万円の住宅手当を支給し、社員の8割以上がこの制度を使用しているという。とてもユニークな会社である。若かったら私もこんな会社で働きたいなとも思った。
 前澤さんは、世間の物差しには関知しないという吹っ切れた態度が印象的で、カリスマと呼ばれるだけのことはあった。今回、彼はビジネスの宣伝のために月旅行をぶち上げたのではないと私は思うが、結果としての宣伝効果は相当なものだろう。うちのかみさんのように初めて「ゾゾタウン」という会社を知った人も多いはずだ。社員の士気が上がるのはもちろん、一気に海外展開が進んで世界企業になるかもしれない。まさに、飛ぶ鳥を落とす勢い。
 しかし、栄枯盛衰は世の常。きょう、大学時代の後輩二人と呑んでいたのだが、二人とも80年代末に「ダイエー」に入社した。プロ野球南海ホークスを買収してイケイケのころである。中内功さんは「流通革命」のカリスマとして讃えられ91年には経団連の副会長にまで上りつめた。まさかそこから転落するとは。予想できないことが起きるのが世の常だ。

 昨夜は中秋の名月。曇り空でダメかと思っていたら、深夜、雲間に丸い月が顔を出した。これもまたかならず欠けていくのだなあ。