不思議な九螺ささらの世界

 帰宅時、JR御茶ノ水駅に近づくとジャズの演奏が聞こえてきた。
 MASH弦楽団。聖橋口交差点角は路上ライブの場で、若い女性のギターの弾き語りやハードロックグループなどいろいろ登場して楽しいのだが、このMASH弦楽団も常連だ。ジプシージャズバンドと銘打っている。(弦楽団FBで演奏が聴けますhttps://www.facebook.com/Mashgengakudan/)。
 とても上手で、このグループの演奏の夜は、ちょっと立ち止まって聞き入ったりする。路上ライブは街の自由さを感じさせてくれる。
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神様がコップの表面張力を破り溢れるナイヤガラの滝

煮え切らぬきみに別れを告げている細胞たちの多数決として

雪原に舞い降りてくる白鳥があれはかみさまの読みかけの本

 2014年、朝日歌壇に載った入選作である。不思議な雰囲気が印象にのこった。作は九螺(くら)ささら。変な名前も気になる。(九螺の読み方を知ったのはだいぶ後のことだった)男なのか女なのか。毎週月曜は新聞の歌壇欄に九螺ささらという名前をさがすようになった。調べると、九螺ささらは女性で、他の雑誌や他の新聞の歌壇でもひんぱんに入選していることがわかった。


 きょうの朝刊の読書欄に九螺ささら『神様の住所』の書評が載っていた。彼女の初めての本(短歌とエッセイ)だという。さらに、初歌集『ゆめのほとり鳥』も今月出版された。
 ネットに簡単な経歴があった。
 「神奈川県生まれ。 青山学院大学文学部英米文学科卒業。 2009年春より独学で短歌を作り始める。2010年、短歌研究新人賞次席。2014年より新聞歌壇への投稿を始める。」
 ほう、まだ「新人」だったのか。『神様の住所』はかなり注目されている。いまアマゾンで詩集の1位でベストセラー。本の内容紹介にこうある。

「短歌が入口で、宇宙が出口。
俵万智穂村弘東直子と続く革新短歌の宇宙を、
哲学的な輝きで新たに飲み込む。

〈体積がこの世と等しいものが神〉夢の中の本のあとがき」

 読んでみたい。九螺ささら、いよいよブレイクするか。

 今年になってから朝日歌壇で入選した九螺ささら作から三首。

石けんの香りして夏はやって来る受けとめるためにTシャツを買う

砂漠化でリストラされた庭師たちビルの地下にて青薔薇を作る

子育てをするのは鳥と哺乳類のみと聞いた日母に電話す