牛久の「東日本入国管理センター」で見たこと2

 きょうから葉月。節気は、一年で一番暑いとされる大暑も後半だ。
 初候「桐始結花」(きり、はじめてはなをむすぶ)が7月23日から。次候「土潤溽暑」(つち、うるおうてむしあつし)が28日から。末候「大雨時行」(たいう、ときどきにふる)はあす8月2日からだ。
 うちの田舎では7月24日が1学期の終業で、その夜が宮内町の熊野神社の夏祭り。宮内まで友達と歩いていって、翌日から夏休みというワクワクした気分で屋台をひやかした。一年で最もうれしい日だった。真っ青な空は、子どものころの夏休みを思い出させる。
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 きょうも茨城県の牛久入管=「東日本入国管理センター」に行ってきた。
 交通が実に不便だ。一日数本しかないバスを降りて、標識に従って林の中の道を歩いていくとちょっと心細い。どうしてこんなロケーションを選ぶのだろうか。隠すためか、人々に忌避されるからか。

 きょう面会したのは8人。うち二人が、自殺未遂をしていた。
 一人は日本滞在11年で日本人女性と結婚しているCさん。在留資格はないが、強制送還や収容を一時的に免除される「仮放免」を更新してきた。過去2回、更新が拒否され、それぞれ10か月収容された経験がある。今回は3回目の収容で、すでに2年3カ月経ち、いつ仮放免で出られるかわからない。絶望し、トイレの便座を壊して、その破片で体を深く切ったのが最初の自傷事件。「これです」、Cさんは面会室で立ち上がると、シャツをめくって傷跡を見せてくれた。その時、Cさんは血だらけだったが、入管の職員は傷の手当てをせず、Cさんの両手をロープでしばって20時間放置したという。2回目の自殺未遂は首吊りで、失神して危ない状態になったそうだ。Cさんは、「頭が破裂しそうになったら、また自殺しようと思うかもしれない」という。

 もう一人のDさんは、日本人女性と正式に結婚した1週間後に収容され、もう1年3カ月になる。シャンプーを大量に飲んで死のうとしたという。「まじめに生きて、よい家庭を築いていこうと思っているのに、全く理解してもらえない」という。
 彼らはともに、トルコに住む少数民族クルド人。トルコでは政府がクルド人を抑圧し、トルコ軍は独立派クルド人勢力の掃討作戦を続ける。クルド語の使用、歌や踊りも禁止され、理由もなく警察にしょっぴかれることも多い。トルコには絶対帰りたくないという。
 二人の奥さんがともにしっかりもので、夫を支えようとしているのが救いだ。待合室で、収容されている恋人に面会に来たという21歳の可愛い日本人女性とそのお母さんと知り合った。聞くと恋人は仮放免中に隣の県に行ったことを理由に、もう1年7ヶ月も収容されているという。仮放免中は移動の自由がなく、登録した県から出ることができないのだ。お母さんは、娘の彼とはきょうが初対面だという。入管センターに収容されているとなると、「不良外人」と冷たい目を向ける人が多いのに、娘さんの交際を暖かく見守っているお母さんもいる。ほっとさせられた。

 センターに収容されている人はどんな一日をおくるのか。驚くのは、一日の大半を居室に閉じ込められていること。ほとんど刑務所である。鍵が開けられて出られるのは午前午後計6時間ほど。出られると言っても、廊下と洗濯所やシャワー室、卓球台が置かれた小さな共用スペースだけだ。屋外でサッカーやバスケをする運動時間は40分。居室から出られない。多くは5人部屋で、違った国籍、民族の人が、10畳足らずの空間に一日の3分の2以上の時間を過ごす。これはかなりのストレスだ。毎日何もすることがなく、娯楽や教養のための設備がほとんどない。パソコンもなければスマホも禁止。外の家族や友人とつながるのは公衆電話だけ。テレフォンカードの差し入れがありがたいという。
 何よりつらいのが、いつ出られるか分からないこと。今日面会したなかで、もっとも長期に収容されている人は、なんと3年だ。何人もの被収容者から「刑務所の方がいい」という声を聞いた。
 刑務所なら、刑期が何年と決まっている。まじめにつとめれば早く出られることもある。中で仕事ができ、わずかだがお金を貯めることもできる。最低限の「将来」が見える。それに引き換え、牛久は・・というわけだ。


 いま牛久のセンターでもちきりなのが、先週木曜に起きた待遇改善だ。朝8時から夜11時までだったエアコンの運転時間が24時間になったことと、朝はシャワーは水だったのが、朝からお湯が出るようになったこと。実は、先週月曜に山本太郎参院議員が牛久のセンターに視察に来て、これらの改善を要求したことで実現したのだという。また、およそ340人の被収容者全員に、先週はビスケット、今週月曜はアイスクリームが議員からのプレゼントとして配られたという。非常にありがたがられていた。
https://twitter.com/yamamototaro0/status/1021374915570642944
https://twitter.com/taro_koho/status/1021368511954792448
 一人の議員の訪問でこれだけ「改善」が見られるなら、国会議員が大挙して訪れればだいぶ事情は変わるのではないかと言うと、「牛久の会」代表の田中喜美子さんは「入管、難民の問題は票にならないからか関心を持つ議員は少ないのよ」と嘆く。
(つづく)