83歳の誕生日を迎えた美智子皇后

 きょうで15日連続の雨で、10月としては127年ぶりだという。
 先日の超大型台風により、各地で相当の被害が出ている。やっと去ったかと思ったら、またフィリピン沖に次の台風が発生したという。被災してまだ家の修復も済まない人たちは心配でたまらないだろう。大きな被害がでないように祈る。
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 「怒りの民意をどこで、どう示すのか」という選挙と日本の政治家への怒りを福島県在住のライター、小松理虔 (りけん)氏が書いている。
 「今の国政を見ていると、震災と原発事故のことなんて皆さんとうの昔に忘れてらっしゃるんだろうなと思わずにはいられない。」云々。たしかにそうだよな、と頷いた。ご一読を。
http://politas.jp/features/13/article/601
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 先日、美知子皇后が83歳の誕生日を迎えるに当たって、宮内記者会の質問に文書回答した内容が公表された。いつもながら、良識、叡智を感じさせる回答だ。
  まず一年を振り返っての冒頭にこうある。
《(略)昨年の熊本地震に始まり、豪雨により大きな被害を受けた九州北部では、今も大勢の人たちが仮設住宅で生活を続けていること、さらに地震津波の災害から既に6年以上経た岩手、宮城、福島の3県でも、今なお1万8千人を超す人々が仮設住宅で暮らしていることを深く案じています。また、北九州には、地震で被災した後に、再び豪雨災害に見舞われた所もあり、そうした地区の人たちの深い悲しみを思い、どうか希望を失わず、これから来る寒い季節を、体を大切にして過ごして下さるよう心から願っています。》
 小松さんは「震災と原発事故のことなんて皆さんとうの昔に忘れてらっしゃるんだろうな」と言うが、皇后は今も東日本大震災の被害者のことを気遣っており、その思いやりの表現が心にしみる。

 ベトナム訪問について;
《今回訪問したことにより、ベトナム独立運動の先駆者と呼ばれるファン・ボイ・チャウと日本の一医師との間にあった深い友情のことや、第2次大戦後の一時期、ベトナムで営まれていた日本の残留兵とベトナム人の家族のことなど、これまであまり触れられることのなかった、この国と日本との間の深いつながりを知ることができ、印象深く、忘れ難い旅になりました。》
 ファン・ボイ・チャウ(潘佩珠)を知らない人も多いと思うが、フランスからの独立運動の闘士で、武装闘争のための武器を日本から調達しようと来日。独立運動を担う人材育成のためにベトナム人を日本に留学させる「東遊(ドンズー)運動」を起こした。1907年、日仏協約の締結後、フランスの要請で日本はベトナム人留学生を国外追放。このとき神奈川県袋井市(旧浅羽町)の医師、浅羽佐喜太郎が困ったファン・ボイ・チャウを全力で支援した。明治の日本人は、ベトナム人はじめアジアの独立派の志士を支援する義侠の人びとがたくさんいたのである。また残留日本兵の問にまで言及しているのは、皇后が、明治から戦後にいたる長いスパンで近代アジアにおける日本の歴史を考えているのだろう。

 軍縮ノーベル平和賞への言及も印象的だった。
《米国、フランスでの政権の交代、英国のEU脱退通告、各地でのテロの頻発など、世界にも事多いこの一年でしたが、こうした中、中満泉さんが国連軍縮担当の上級代表になられたことは、印象深いことでした。「軍縮」という言葉が、最初随分遠い所のものに感じられたのですが、就任以来中満さんが語られていることから、軍縮とは予防のことでもあり、軍縮を狭い意味に閉じ込めず、経済、社会、環境など、もっと統合的視野のうちに捉え、例えば地域の持続的経済発展を助けることで、そこで起こり得る紛争を回避することも「軍縮」の業務の一部であることを教えられ、今後この分野にも関心を寄せていく上での助けになるとうれしく思いました。国連難民高等弁務官であった緒方貞子さんの下で、既に多くの現場経験を積まれている中満さんが、これからのお仕事を元気に務めていかれるよう祈っております。》
《今年もノーベル賞の季節となり、日本も関わる2つの賞の発表がありました。
 文学賞は日系の英国人作家イシグロ・カズオさんが受賞され、私がこれまでに読んでいるのは一作のみですが、今も深く記憶に残っているその一作「日の名残り」の作者の受賞を心からお祝いいたします。

 平和賞は、核兵器廃絶国際キャンペーン「ICAN」が受賞しました。核兵器の問題に関し、日本の立場は複雑ですが、本当に長いながい年月にわたる広島、長崎の被爆者たちの努力により、核兵器の非人道性、ひと度使用された場合の恐るべき結果等にようやく世界の目が向けられたことには大きな意義があったと思います。そして、それと共に、日本の被爆者の心が、決して戦いの連鎖を作る「報復」にではなく、常に将来の平和の希求へと向けられてきたことに、世界の目が注がれることを願っています。》

 以下も、社会問題をふくめ情報を見る眼の確かさ、リテラシーを感じさせる。
奨学金制度の将来、日本で育つ海外からの移住者の子どもたちのため必要とされる配慮のことなどがあります。また環境のこととして、プラスチックごみが激増し、既に広い範囲で微細プラスチックを体内に取り込んだ魚が見つかっていること、また、最近とみに増えている、小さいけれど害をなすセアカゴケグモをはじめとする外来生物の生息圏が徐々に広がって来ていることを心配しています。こうした虫の中でも、特に強い毒性を持つヒアリは怖く、港湾で積荷を扱う人々が刺されることのないよう願っています。
 カンボジアがまだ国際社会から孤立していた頃から50年以上、アンコール・ワットの遺跡の研究を続け、その保存修復と、それに関わる現地の人材の育成に力をつくしてこられた石澤良昭博士が、8月、「マグサイサイ賞」を受賞されたことは、最近のうれしいニュースの一つでした。博士が「カンボジア人によるカンボジア人のための遺跡修復」を常に念頭に活動され、日本のアジアへの貢献をなさったことに深い敬意を覚えます。》
 あらためて、日本にこのような皇后を持つことの幸運を思った。これもご一読を。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22462400Z11C17A0000000/