アジアプレス設立30周年イベント

 きょうの朝日川柳から
 普通なら「記憶にないから言ったかも」(神奈川県 和泉まさ江)
 たしかに、国会では「記憶にない」は「言っていない」ことになっているが。

 90歳になったがボケ防止に国会議員にでもなろうか、という新聞の投書欄に載った投稿がツイッターで紹介されていた。

 「都合の悪いことは全て『記憶にございません』と言えばよい。大事な書類は『探しましたが見当りません』で済む。ちょうど記憶力が減退しつつあり、生来ずぼらな私にはむいているではないか」。代議制民主主義の危機である。
https://twitter.com/fckisn/status/887794912644616193/photo/1
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 記憶力の弱い稲田防衛相が辞めるという。だが辞めて済む話ではない。
 一方、民進党は野田幹事長につづいて蓮舫代表が辞意を表明した。自民党支持率がいくら下がっても民進党がこれではどうしようもない。国民の無力感がまた政治への無関心を助長することになりかねない。踏ん張ってもらわないと。
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 《組織に属さずに国内外で活動する記者のネットワークである「アジアプレス・インターナショナル」が1987年の設立から30年を迎え、22日に東京都内で記念イベントを開いた。》(毎日新聞27日)
 アジアプレスはフリジャーナリストの集団で、紛争地取材でも活躍している。このご時世で、30年活動を続けるというのは大変なことで、感服する。http://www.asiapress.org/
 今週は連日夜、メンバーが作ったドキュメンタリー作品を早稲田で上映している。今日の上映は玉本英子さんの『ザルミーナ』と古居みずえさんの『ぼくたちは見た』。

 『ぼくたちは見た』は2008年のイスラエルによるパレスチナガザ地区侵攻の実態を、ガザ南部の農業地帯で取材したもの。親族が29人も殺されたサムニ家の子ども達のすさまじい証言が衝撃的だった。この「侵攻」での犠牲者はパレスチナ側が1300人超に対してイスラエル側は13人。100対1。一方的な虐殺であったことは明らかだが、マスメディアでは「どっちもどっち」という報道が多かった。畑の作物やオリーブの木まで引っこ抜いているのは、住民の生活破壊を狙っており人道に対する罪にあたる。「侵攻」の貴重な記録である。作品には、親兄弟を目の前で殺され、自らも負傷し、家を破壊された子ども達が何人も登場する。「イスラエル兵と同じことをやりたい」と真顔で言う女の子も。彼らの心を思うと居てもたってもいられない気持ちになる。
 観客からは、マスメディアに載らない、認識を新たにした、こういう紛争地の実態を知らせてくれるのはほんとうにありがたいという感謝の声が寄せられた。誰かが伝えないといけないのである。
 撮影・監督の古居みずえさんが上映後のトークで、パレスチナにのめり込んだ動機を語った。もとは、普通の会社員だったという。ところが30歳代後半、リウマチの診断を受け、数か月入院した。将来どうなるんだろう。不安と絶望のなか、これまで人生に何もかけてこなかったと思った。そのうち症状が回復して体が軽くなり、何でもできそうな気がしてきた。実家が写真館をしていたこともあり、何かを表現したいとカメラで撮りはじめた。1年ほどたって、渋谷でパレスチナの子どもの写真展を観て衝撃を受け「これをやりたい」と一念発起し、1988年、インティファーダ真最中のパレスチナへと飛びこんだ。その後は、お金の続く限りパレスチナに滞在し、金がなくなったら帰国、昼はバイト夜は写真学校に通って、またお金ができれば飛んでいくという繰り返しだという。本人はこともなげに言うが、並みのご苦労ではないだろう。

 玉本英子さんもやはり元はOLだった。あるニュース番組で、ドイツのクルド移民がわが身にガソリンをかけて抗議する姿を見てショックを受けた。ドイツ製の武器がトルコに送られてクルド住民の弾圧に使われるのに命がけで反対していたのだった。その後、旅行で行ったオランダで、テレビで観た焼身抗議のクルド人男性に偶然めぐりあったことが彼女をジャーナリストの道へと向かわせることになる。

 古居さんの場合は写真が、玉本さんはテレビニュースが、人生を変えている。取材者自身が報道によって大きな影響を受けていたというのが面白い。「一枚の写真が世の中を変えることがある」という言葉があるが、うなづけるものがある。
 そういえば、私も高校時代に観た「水俣」という映画で人生観を変えられたのだったなあ。