吉永春子さんの「コーヒー代」

takase222016-11-16

 先週末は、森本喜久男さんとの打ち合わせのついでに、京都の秋を堪能した。

 森本さんの報告会のあった法然院は今回初めて行った。哲学の道の近く、銀閣南禅寺の間という観光地区にあるのだが、森の中のお寺という感じの静謐な雰囲気が保たれていて実によかった。今度、ゆっくり回りたい。

 銀閣寺はあいにくの曇り空だったが、紅葉を見に来た人でいっぱい。はるか昔、一度来たことがあるようにも思うが自信がない。だから初めて来たのと同じだ。歳のせいか、そんな場所が増えてきた。銀閣はフォトジェニックで写真を撮るのが楽しい。撮影スポットには人が群がって、みな同じようなショットを持ち帰るのだろうな。

 今宮神社の前を通りかかると、銀杏が日光に映えて鮮やかだ。ほおっと見とれてしまう。
 宿泊は宇多野ユースホステル。素泊まりで3000円ちょっとという料金はとても助かる。静かな場所でとても清潔なので、京都での宿はここにしている。外国人にも人気で、今回はシンガポールの高校生30人くらいの集団がにぎやかだった。自転車を1時間以内なら無料で貸してくれるので、早朝、kikiというパン屋まで買い出しに行き、ユースに戻って朝食。とても便利。入口の紅葉が真っ赤だった。

 京都の紅葉は、今週末から来週が見ごろだという。
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 吉永春子さんが亡くなっていた。
 《社会派のドキュメンタリー番組の制作で知られる番組制作会社「現代センター」代表、吉永春子(よしなが・はるこ)さんが4日、脳出血のため死去した。85歳。葬儀は近親者で営んだ。TBSで日本軍の犯罪を追及した「魔の731部隊」などの話題作を手がけた。》毎日新聞
 私は新聞の訃報記事には気づかず、綿井健陽さんのツイートで知って驚いた。最後にお会いしたのは、3年か4年前、彼女が講師のドキュメンタリー講座のような場だったと思う。いつものように早口で、参加者を次々に指名しては「あなた、どう思うの?」と質問しながら話を進めていた。とても元気で若々しく、80歳すぎとは思えなかった。

 吉永春子さんに私は特別な恩を感じている。窮地にあったときポンと大金をくれたのだ。
 4年前に書いた「30万円のコーヒー代」に登場するのが吉永さんだ。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20120107
 この奇特な人は誰なのか?といろんな人に聞かれて、名前は勘弁して、と今まで明かさなかったが、亡くなった今となってはもういいだろう。
 こんなこともあった。あるとき、感謝の意味で、ほんのちょっとしたものをお中元で差し上げたら、「私にこんなものを贈るんじゃない!」と強く叱られた。また、「元気でやっています」と近況を書いた手紙を送ったところ、現金書留で大金が届いた。慌てて電話したら「コーヒーでも飲みなさい。がんばって」と一言言って切られた。再びの「コーヒー代」。心配してくれているんだなあ、と胸が熱くなった。
 
 熱く、不器用な、いわば直球の人だった。いまも私の中に、さわやかな恩義が残りつづけている。ご冥福をお祈りします。