モスル奪還作戦からの戦場リポート


コスモス。宇宙という意味のcosmos(ギリシャ語のKosmos)と同じ。すごい名前だが、なぜなのだろう。
横田めぐみさんを思って、お母さんの早紀江さんが「コスモスの花のように」という歌を作った。その中にはこんな歌詞がある。
遠い空の向こうにいる
めぐみちゃん あなたも
お母さんが育てたあのコスモスのように
地に足をふんばって生きているのねきっと
しっかりと頭を揚げて生きているのねきっと」

もう少しで、めぐみさんが拉致された11月がやってくる。早紀江さんは、めぐみさんの失踪を思い出させる秋がきらいだという。
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いま、イラクでは政府軍、クルド勢力、有志連合が「イスラム国」の拠点モスルを総攻撃している。ジャーナリスト常岡浩介さんが、20日クルド人の軍隊、ペシュメルガの攻撃開始を取材した。今夜の報道ステーションで短くではあったが彼の戦場リポートが放送された。










私がプロデュースした形だが、戦場取材はリスクが高く、いつも悩む。リスクというのは身の安全だけでなく、採算が合うかという経済的な意味でもある。こうした取材は、何かあると責任問題が生じるから、テレビ局が事前に発注してくれないのだ。となると、こっちのオウンリスクで行くしかない。苦労して取材しても売れなかったら、航空券代はじめ全経費が赤字となってしまう。
みなさんは、戦場では、パンでもかじって、寝袋で寝てるから金なんかいらないと思っているかもしれないが、実は、現代における戦場取材には非常にお金がかかる。例えば、取材許可をタイミングよく事前に取る作業。これにはコネのある人脈を頼らねばならない。ここで活躍するのが「フィクサー」と呼ばれる戦場取材のコーディネーターたちだ。
移動するのに軍用車両に乗せてもらうわけにはいかない。自前で車と運転手も確保する必要がある。今回の作戦は世界中で注目されており、ペシュメルガの前線基地だけで数十人のジャーナリストが開戦を取材しようと駆けつけている。フィクサーも奪い合いだ。もちろん車両費も、近くの町でふつうに車とドライバーを借り上げるのとは全く違った金額設定になる。フィクサーの確保と値段交渉は、ジャーナリストにとって取材前の闘いである。
一日何ドルかかるか分かると、滞在日数を掛け算すれば滞在コストが出てくる。その数字を見ていると、「納得できる映像が撮れるまでねばってがんばる」などと言っていられなくなる。
プロデュースする立場の私としては、どんな取材をすれば売れるのか、またどのくらいコストをかけていいのか、つまりお金のインとアウトを天秤にかけて現地の常岡さんと調整しなければならない。
こんなことを書くと、なんだ普通の商売人と同じじゃないか、と言われそうだが、実際そうなのである。私も常岡さんも、趣味や遊びで、あるいは崇高な使命感だけでやっているわけではない。仕事としてこれで食っていこうとしているのだ。
これからしばらく、商業ジャーナリズムに生きる我々の「黒字をめざす闘い」はつづく。