天皇のご意志は「普通の」天皇制

天皇生前退位に関する政府の有識者会議がきょう初会合を開いた。
実は、すでに6年前、天皇は80歳をめどに生前退位したいとの意向を宮内庁参与会議で示していた。2010年7月、御所に、当時の宮内庁長官侍従長、3人の参与などが集まって開かれた「参与会議」の席で、天皇が突然、「生前退位」の意向を明らかにしたという。
その場にいた、去年まで9年間「参与」を務めた三谷太一郎氏(東大名誉教授)がこう語っている。
天皇陛下は『譲位』という言葉を使われた。中世とか近世の『上皇』を持ち出して、『天皇制の長い歴史において、異例のこととは思われない』とも述べられた。そうした意向を初めて直接伺って、大変驚がくしたというのが率直な印象でした」NHKニュース)。

天皇の真意については、様々な解釈が出まわっているが、この三谷氏の証言で、私は天皇が、天皇制を「従来の」、別の表現を使えば「普通の」天皇制にしたいと考えているのではないかと思った。「従来の」「普通の」というのは、明治維新によって「異様な」形にされる前までの伝統的な天皇のあり方、という意味だ。であれば、「譲位」、「上皇」だけでなく当然「女帝」も認めればよい。明治期から終戦までの天皇制が、日本史においては伝統から逸脱した特殊なものであったと相対化することから今後のあり方の議論を進めてほしい。
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きのう、枝元なほみさんに触れたが、『ビッグイシュー』の宣伝をかねて、さらに紹介してみたい。

私がこの雑誌で好きなコーナーに、枝元さんが登場する「世界一あたたかい人生レシピ」がある。このページは上段が、読者の悩みにホームレスが答える「ホームレスの人生相談」で、それを受ける形で下段に「枝元なほみの悩みに効く料理」があるという構成になっている。ある号では;

【ホームレスの人生相談】
Q:結婚して16年。結婚してからずっと夫の仕事の手伝いをしています。つまり、家でも職場でもずっと一緒。夫は良くも悪くもマイペースで、少し自己中心的。私一人の時間をなかなかつくろうとしてくれません。仲は悪いわけではないのですが、いつも一緒だと息が詰まります。(49歳/女性)

《答:仕事もして家事もして、さらにお連れ合いとずっと一緒・・・。彼がどんなに優しい人だって、四六時中ずっと一緒だったら、ケンカしてなくても、しんどくなってしまうよね。
 僕はもともと両親と姉二人の5人家族。1歳上の姉とは歳が近いこともあって、もの心ついた頃からケンカばっかりだった。さらに6歳上の姉まで加勢して、僕をいじめるんです。時にはモノまで投げつけてくる。そのせいで、僕は今も女性が恐いんですよ・・・(笑)。
 ある日、亡くなった祖父が飼っていた犬が我が家にやって来た。で、その犬が、僕の大切にしていた本をかじってバラバラにしちゃった。でもね、「犬だから仕方ないや」と、まったく腹が立たなかった。もしこれが姉のしたことだったら、僕は怒り狂ってたはず(笑)。
 その時にふと気づいたのは、姉には優しくしてほしいと期待するからこそ腹が立ってたということ。だからそれ以降は姉に何かされても、「これは犬がしたこと」と思うようにしたらストレスが減りました(笑)。もちろん根本的な解決じゃないんだけど、今の状況や相手の性格を急に変えるのは簡単じゃないですもん。毎日のことだからこそ、そんな発想も必要だと思うんです。しんどくなりそうな時は、失礼ながら、お連れ合いのことをクマとかウサギとか好きな動物にたとえてみたら、「じゃあ、仕方がないか!」って笑って流せることがあるかもしれません。
 そしてやっぱり、人間誰だって一人になる時間は必要です。僕も一人の時間と、お客さんやスタッフと話す時間、どちらもあるからどちらも楽しい。ぜひお連れ合いに「私も一人の時間がほしいし、あなたも一人の時間をつくってね」と提案して、お互いにリフレッシュしてさらに仲良しご夫婦でいてくださいね。(大阪・淀屋橋/Iさん)》

 ホームレスの人が、家族持ちの読者に「さらに仲良しご夫婦でいてくださいね」とエールを送っているのである。懐の深い答にじんとくる。
 で、この人生相談を受けて、枝元さんの「悩みに効く料理」が下段に続く。この日のレシピは「作り置き肉みそ」。

《私の料理の心の師匠は、背筋のとおった明治生まれでした。その師匠がある時、「台所は女がひとりになれる場所」と言いました。昭和生まれの私は、女だけが料理しなくちゃいけないの?とちょっと疑問に思ったりもしましたが、でも料理をしながらいろいろ考えたりして、確かに自分だけの時間を持てる大好きな場所だと気がつきました。
 おまけに旦那さんに料理を作り置けば、気楽に出かけることもできるかも。さあ、どうぞキッチンへ!》
 このページで確実に心があたたかくなる。

最後に宣伝。『ビッグイシュー』は毎月1日と15日が発売日なので、そのあたりに大きな駅で乗り降りすることがあれば、駅前周辺を見回してみてください。雑誌を手にかかげた売り子がいるかもしれません。定価350円のうち180円が売り子に還元され、自立のための資金になります。中身も素晴らしい雑誌なので、ぜひお求めください。