真実に生きることができる社会

 きょう、安保法の新任務の訓練開始を防衛相が表明した。
 稲田朋美防衛相は二十四日午前の記者会見で、昨年九月に成立した安全保障関連法に基づく自衛隊の新任務について、訓練を開始すると表明した。他国を武力で守る集団的自衛権行使も含め、同法に盛り込まれたすべての新任務が対象。可能なものから順次、訓練に着手する。当面は、南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に十一月に派遣される陸上自衛隊の交代部隊に「駆け付け警護」などの新任務を訓練させる。(略)
 南スーダンPKOの交代部隊は、陸上自衛隊第九師団第五普通科連隊(青森市)主体の部隊。今月二十五日から訓練に入り、九月中旬以降に、武装勢力に襲われたPKO関係者らの防護に向かう「駆け付け警護」と、PKO参加各国との宿営地の共同防衛について訓練する。》
東京新聞
 今回は、任務が実際に与えられるのを前提に訓練を実施するわけで、自衛隊にとって大きな転換点になるのは間違いない。まず、南スーダンの現実がもっと報道されるべきだ。
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 北朝鮮が潜水艦からの弾道ミサイル発射を成功させた。
 《防衛省は、北朝鮮が24日午前5時29分ごろ、北朝鮮東岸から1発の弾道ミサイルを発射し、およそ500キロ飛しょうして日本海に落下したと推定され、発射された弾道ミサイルは、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイルと考えられると発表しました。》(NHK)
 各国の防衛関係者は一様に北朝鮮のミサイル性能が確実に高度化していると見ている。
 これまで多くの「専門家」たとえば伊豆見元氏は、ミサイル発射や核実験が「逆切れ路線」で5月の党大会までしか続かないなどと言っていた。党大会後もどんどんやっているんですけど。
http://www.sankei.com/world/news/160108/wor1601080005-n1.html
 専門家のコメントがいつも的外れに終わるのは、何度もここで書いたように、「思惑」分析に集中するからで、さらに言えば北朝鮮が本気で兵器開発をしているという「事実」を見ないからである。NHKの常連コメンテーター平岩教授は、今回のSLBM発射は日中韓外相会議に合わせたなどと解説していた。それは本質ではない。
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 きのうの水俣病の話で想起するのは、一昨年の天皇・皇后の水俣訪問だ。

 この訪問は皇后に石牟礼道子さんが働きかけて実現したものだ。
天皇・皇后両陛下は、2013年10月27日、第33回全国豊かな海づくり大会の式典に出席した後、九州新幹線水俣市に入り、エコパーク(水俣湾親水緑地)の水俣病慰霊の碑では一礼し、白菊の花をささげた。その後、水俣病資料館を視察。患者の写真、被害を伝える新聞記事などの説明を受け、被害の実態を伝えている水俣病資料館「語り部の会」の会員10人と懇談した。事前の公式日程にはなかったが、両陛下の希望で昼食後、胎児性患者ら3人とも懇談された。》
(お忍びでの患者との面会についてはhttp://dot.asahi.com/wa/2014101500072.html

 このとき、天皇は次のような感想を述べている。
 《どうもありがとうございます。本当にお気持ち、察するに余りあると思っています。
 やはり真実に生きるということができる社会をみんなで作っていきたいものだと改めて思いました。
 本当にさまざまな思いを込めて、この年まで過ごしていらしたということに深く思いを致しています。今後の日本が、自分が正しくあることができる社会になっていく、そうなればと思っています。
 みながその方に向かって進んでいけることを願っています。》
【母の胎内で水銀に侵された胎児性水俣病患者の前田恵美子さん(59)と】
 天皇・皇后にとっては、戦争とともに戦後の公害の象徴である水俣病の犠牲者を弔い、生存する被害者たちに直接に語りかけることを自らの任務と考えていたのではないだろうか。
 天皇は、日本が「真実に生きるということができる社会」、「自分が正しくあることができる社会」になっていないことを強く示唆しているように思われる。