都知事選を振り返って


選挙の日、近くの駅で、「ラッセラー!」の掛け声が聞こえる。ねぶたの跳子(はねこ)たちが青森にいらっしゃいと各地をまわっているのだ。夏真っ盛り。
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都知事選の結果がでた翌日、1日(月)の「赤旗」一面トップ。
「鳥越氏が大健闘」。
うーん、あれが「大健闘」か・・
不本意な結果となったことを重く受け止めています」とする「市民連合」との温度差を感じる。http://shiminrengo.com/archives/1436
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 今回の都知事選は、関心が高く、前回2014年の投票数493万票に対して今回は662万人が投票した。鳥越氏の得票は3位で、135万票足らず。得票率20.56%となんとか2割に達したが、これが歴史的といっていい大惨敗だったのははっきりしている。
 前回の知事選は、2位の宇都宮健児氏が98万票以上で2割(20.2%)を得票、細川護熙元首相がそれに次ぐ95万票超(19.6%)を獲得していた。野党側は分裂選挙だったが合わせて4割。今回は、保守が割れるという得がたいチャンスに、鳥越氏は民進、共産、社民、生活など野党の統一候補として打って出た。それなのに、このていたらく。
 野党の選挙協力への信頼は地に墜ちた。今後の政界再編にも影響が出そうだ。終盤に民進党岡田代表が、次回代表戦に出ないなどと突然言い出したのも、鳥越氏の惨敗が見えたからだろう。
 振り返ると、鳥越氏というタマに大きな問題があったのははっきりしている。
 私の尊敬する新聞記者OBのジャーナリストが、選挙戦が始まってすぐ、「鳥越さん、あんな程度とはねえ。言葉のプロのはずがおいおい、言葉を持ってないじゃないか」と喝破していた。しゃべるほどに票を減らしていった。
 政策がないと批判されて「(政策なんか)3日あれば大丈夫」などと暴言も連発。立候補直後は3人の候補者のなかで最高だった支持率が、最後は最下位になってしまった。
 宇都宮氏が鳥越陣営から応援演説を頼まれて断ったときの声明では、いわゆる「淫行」疑惑が触れられている。
 《今回の報道で伝えられている内容は、女性の人権にかかわる内容であり、都知事候補にふさわしいかどうかという資質にかかわる重大な問題です。その具体的な報道内容を見る限り、これを「事実無根」として退けられる案件とは考えられません。また、「事実無根」だとする説得力ある反証も挙げられていません。
 被害を受けたという女性がおられる以上、都知事候補として、どのような事実があったのかを自ら公開の場で説明し、被害女性および都民の納得を得る責任があると考えます。
 私はこれまで多くの人権問題に携わってきました。その原則をここでまげることはできません。鳥越候補がこれまでの対応を撤回せずに説明責任も果たされないとすれば、きわめて遺憾ではありますが、都民に対してあなたを都知事にふさわしい方として推挙することができず、応援に立つことはできません》http://utsunomiyakenji.com/1040
 雑誌記事をふつうに読めばこうなるのは当然である。
 しかし、いわゆるリベラル派には「陰謀」論がいまだにくすぶっている。
 《初の女性知事になるかどうかという東京都知事選挙で「女性問題」をぶつけて鳥越票を失わせた週刊誌報道。日本ではこういう手法も許されるということなのですね(^^) つまりメディアを押さえた候補が勝つと》(あるツイッターより)
 これではまともな反省も教訓も出てこないのではないか。まず、小池氏がメディアを支配しているはずがないことは当然として、そもそも、あれは「女性問題」などではない。
 鳥越氏が「サンデー毎日」編集長時代の1989年、宇野宗佑首相(当時)が月額30万円で愛人契約を結んでいたという「三つ指事件」を暴露して、結果的に宇野首相を退陣に追い込んだが、これは男女間の合意にもとづく「女性問題」だった。鳥越氏は、この記事について、「政治家であっても、不倫だけの話ならば、家庭内で解決されるべきだ。しかし、取材の結果、カネで女性を買っていたと判断したから、首相としての資質を問うことにした」と述べている。
 一方、鳥越氏の場合は、文春、新潮の記事によると、大学のゼミでの立場を利用したパワハラによる強姦未遂事件。「女性問題」、「女性スキャンダル」などというレベルの話ではない。記事の通りなら、都知事候補の資質がまったくなくなるのは明らかだ。
 それほどの重大疑惑なのに、鳥越氏は一切の釈明を拒否し、弁護士に一任すると逃げた。「弱者の立場に立つ」、「聞く耳を持つ」、「事実に向き合う」うんぬんの自己アピールがむなしい。
 ジャーナリストなんて、いい加減なもんだな、とジャーナリストそのものへの世間の信頼も大きく下がっただろう。