原発事故はマニュアル無視災害

きょうはベルギーのテロを取材してきたスタッフを迎えに羽田空港へ。
おつかれさまです。
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近くの家の庭にボケが咲いていた。
春にふさわしい、ちょっと色っぽい花である。

25日の東京新聞夕刊に載った松原隆一郎・東大教授の論考「原発の人災 必ず再発〜責任体制に不備」が興味深かったので紹介したい。
東日本大震災から5年が経過したタイミングで、東京電力福島第一原発事故にかかわる重大な問題が二点報じられた。第一は業務上過失致死罪で強制的に起訴すべきだとする検察審査会の議決を受け、検察官役の指定弁護士が2月末、勝俣恒久元会長ら東電旧経営陣3人を東京地裁に強制基礎したことである。原発事故の刑事責任が初めて法廷で争われることとなった。
 第二に、東電は事故後約2カ月間、燃料が傷ついた状態である「炉心損傷」と表現していたが、それは「炉心溶融メルトダウン)と判定する根拠がなかった」からだと釈明してきた。「損傷」は「溶融」よりも深刻でない状態を指す。ところがこのほど社内の「原子力災害対策マニュアル」が発見され、「炉心損傷の割合が5%を超えれば炉心溶融」と記されていたと記者会見がなされた。
 原発原子力規制委員会が厳格に査定・監督しており、また予想の範囲内の天災であれば事業者も災害対策マニュアルを準備しているのだから、事故が起きても拡大は未然に防がれ、安全の範囲内に収まるとされてきた。そこで東電元幹部に対する責任を問う裁判では、「天災の予測が可能だったか」が焦点になるとされている。
 ところが今回の「5年後のマニュアル発見」により、そうした図式も吹き飛んでしまった。いくら設備を厳しく規制したところで、対策マニュアルを見過ごすならば事故拡大は防げない。これまでにも斉藤誠・一橋大学教授が、東電の現場は技術的対応の「手順書」で指定されていた早期の減圧注水の機会を再三見逃していたと指摘している(『震災復興の政治経済学』日本評論社)。それが事実だとすれば、この事故は天災というより「マニュアル無視災害」だったということになる。(つづく)