テロ組織と交渉する米国の新方針、どうする安倍首相


写真の真っ赤な実は、地面に落ちているアオキの実。
ほとんどの実に傷がついている。
これはヒヨドリがついばんで落ちたからだ。
はっきり嘴の痕が分かる傷もある。
これを教えてくれたのは、月曜に行った高尾山のボランティアガイド。

コナラの木の下に行くと小枝が散らばっている。
もげたところの痕は斜めになっていて、これはムササビが食いちぎったのだという。ムササビは切り取った枝を前足で持って若芽を食べるそうだ。
また、木の高い幹に咲いているスミレがある。
種を運んだのは蟻。種に甘みがあるので巣に持って帰る途中、甘味は運んで、種を途中で置いていったのが芽吹いたという。
そこに見えるのは、スミレの生存戦略だ。

そのガイド、単に花や鳥の名前を教えるのではなく、自然の循環、植物と動物の相互関係を示してくれてとてもおもしろかった。
森を歩いて観察すると、すべてがつながり、つながりあっていることが分かる。「縁起」だなあ・・・

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米国が「人質救出にためテロ組織とも連絡をとる」という新方針を打ち出した。
中東問題に詳しいジャーナリストの川上泰徳氏がWEBRONZAで、「安田純平さんを救出するために」を3回にわたって寄稿しているが、その2回目で、去年6月、米国が、自国民が海外で拘束された場合の対応方針を大きく転換したことを指摘している。
安倍政権は、「テロリスト」とは一切交渉しないという方針で、昨年、湯川、後藤両氏が「イスラム国」に拘束された際もそれをつらぬいた。結果、二人は殺害され、私はこれを「見殺し」と表現した。
この安倍政権の方針は、同盟国である米国に配慮した、つまり追随したものであるが、当の米国はテロ組織と交渉する方向に舵を切ったのである。

オバマ米大統領は2015年6月、テロ組織などによって米国人が誘拐され、人質になった事件についての政府の新たな対応策を発表した。「大統領政策指令(presidential policy directive)」として新政策を示し、さらに「大統領令(executive order)」として政府の新たな人事や機構の創設を命じた。
米国の新政策は「人質の安全と無事に帰還させることを最優先」として、人質の家族が人質解放のために身代金を支払うことを認め、家族を支援するために政府がテロ組織と連絡をとるという内容である。
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2016032300010.html

オバマ大統領は記者発表で「私は人質事件の対応策の全面的な見直しを命じた」として、次のように述べた。
<世界はISIL(「イスラム国」)による、米国人を含む無実の人質の野蛮な殺害に慄いている。それ以上に人質の家族は、自分たちの政府とのやりとりでしばしば不満やいらだちを語っており、私に直接話した家族もある。異なる部局や機関が、いかに調整されていないか、政府による家族の支援が、いかに混乱しており、矛盾した情報がでているか、家族らがいかに政府の官僚主義によってたびたび途方にくれているか。あるケースでは、家族が愛する人を取り戻すための、ある方法を探っていることについて(政府から)脅かされたということもあった>
<このようなことは全く受け入れられない。私が数家族と会い、彼らの話を聞いたのも、彼らが家族を取り戻す試みが完全に支援されていると確信させるためであり、それは私の厳粛な義務であった。誠実に、絶え間ない努力をしている政府と家族が、一致しているのは、家族が愛する人を取り戻すことが、唯一の優先事項だということである>
(略)
ジェームズ・フォーリー氏は2014年8月、ISIL支配地のシリア北部ラッカにおいて斬首され殺害された。母親のダイアン・フォーリーさんは米ABCテレビで ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)の幹部から繰り返し、身代金を支払うのはテロを支援することを意味すると言われたと明らかにした、という。ダイアンさんはテレビで「3回脅された。その言葉を聞いて、とても怖くなった。(身代金を支払えば)訴追すると言われた」と述べたという。
そのような脅しを受けて、フォーリー家はオンライン上で行っていた身代金のカンパを中止したという。NSCの広報担当者はABCテレビで「政府の指定した組織や個人への身代金の支払いを、法律は明確に禁じている。また、人質犯に譲歩しないというのは、政府の長年の方針でもある。(身代金の要求に応じれば)さらに多くのアメリカ人が誘拐される危険が高まるだけだ。このような方針は公に示しているし、個人に対しても伝えている」とコメントしたという。(略)
オバマ大統領は人質対応の変更について「われわれの米国人の人質を取り戻す作業と、家族への支援を改善するために新しい大統領政策指令(PPD)」を公式に出し、政府機関がその指令を実施することを求める大統領令(EO)に署名したと述べた。》(同上WEBRONZA)
「米国人人質を安全かつ迅速に取り戻す」という最優先課題を責任をもって実施する機構として、国家安全保障会議NSC)に横断的な「人質対策チーム」も設置された。
オバマ大統領は《米国政府が「身代金を払うことはない」としながらも、「テロ組織に妥協はしないが、政府がテロ組織と連絡をとり、人質解放のための家族の働きかけを支援する」という方針を打ち出した。人質が殺されても「テロ組織に妥協しない」ことが、これまでの米政府の方針だったことを考えれば、人質の無事解放を最優先にするという方針転換の意味は大きい。》(同上)

追随する米国が、これまでの「交渉しない」方針は間違っていたとしてやめてしまったのだが、さあ、どうする安倍首相?