自民党が自らの異様さを露呈する事件がまた起きた。
《安倍晋三首相に近い自民党の若手議員約40人が25日、憲法改正を推進する勉強会「文化芸術懇話会」の初会合を党本部で開いた。安全保障関連法案に対する国民の理解が広がらない現状を踏まえ、報道機関を批判する意見が噴出した。講師として招いた作家の百田尚樹氏に助言を求める場面も目立った。
出席者によると、百田氏は集団的自衛権の行使容認に賛成の立場を表明した上で、政府の対応について「国民に対するアピールが下手だ。気持ちにいかに訴えるかが大事だ」と指摘した。
出席議員からは、安保法案を批判する報道に関し「マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい」との声が上がった。
沖縄県の地元紙が政府に批判的だとの意見が出たのに対し、百田氏は「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と主張した。
懇話会は木原稔青年局長が代表で、首相側近の加藤勝信官房副長官や萩生田光一・党総裁特別補佐も参加した。》
この会は、安倍首相を応援するためのもので、メディアをコントロールしようというのも安倍首相の体質そのもの。国会で追及されて謝罪しなかったのも当然だ。
有権者が「つぶさないといけない」のは、この劣化した自民党だ。
TBS「Nスタ」では、発言者を特定して放送した。
ちなみに、「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番」と発言した大西英男(東京16)議員は、去年4月、上西小百合議員の質問中に「まず自分が子どもを産まないとダメだぞ」とヤジったことで知られる人物。
続いて、きょうは自民、公明両党の議員が討論番組から逃亡するという前代未聞の事件も。
《27日未明放送のテレビ朝日の討論番組「朝まで生テレビ!」で、与野党の若手議員に出演を呼びかけたところ、いったん出演を決めていた複数の自民党議員が放送前に出演を見合わせた。「与党として足並みをそろえる」として、公明党議員も出演しなかった。(略)
自民党は当初3人の議員が出演予定だったが、「地元の日程と調整がつかなくなった」などとしていずれもとりやめた。25日に出演が決まった別の1人も、直前になって出演をやめたという。生放送の冒頭で、番組プロデューサーが明らかにした。
番組では、国会で審議中の安全保障関連法案についても討論する予定だった。司会の田原総一朗さんが「自民党の勉強会で若手議員が『マスコミをこらしめるには広告料収入がなくなるのが一番』などと言い、テレビや新聞に書かれた。これが自民党が出てこないひとつの理由かなと思う」と述べた。番組は民主党、維新の党、共産党、日本を元気にする会の野党4党から7人が出演し放送された。》(朝日新聞)
自分たちの主張を報じないメディアはつぶせと言っておきながら、どうぞ出て話してくださいと招かれても形勢不利と見るや逃げてしまう。これが政治家のやることか?
ところで、安倍首相といえば、拉致問題が「売り」だが、それは虚像だと有田芳生さんがツイッターで指摘している。
《朝日連載「70年目の首相」は昨日今日と拉致問題。拉致被害者を北朝鮮に戻さないと決めたのが安倍首相(当時は官房副長官)というのは物語。蓮池透さんが「安倍さんが戻すのをとめた、というのは美化されすぎた話」と証言。じつは拉致問題で首相の成果はこれまでまったくないのが現実なのだ。》
拉致被害者が戻らないという決断は、日本政府と相談しながら、蓮池薫さん自身が下したのだ。
『拉致と決断』(蓮池薫、新潮社)には、不安や迷いに揺れながら決断に至った場面がこう描かれている。
《ここは人生の大きな賭けに出るしかない。このチャンスを逃したら一生悔いと絶望のなかで暮らすことになる、私はそう思った。
意を決し、日本政府に電話した。
「日本にとどまって子どもを待つことにしました。よろしくお願いいたします」
このように書くと、まるで私が冷静沈着で決断力のある人間のように思われるかもしれないが、実際はそうではない。何度も何度も迷い悩み、考えを翻した上での苦渋の決断であり、最後は半ば放心状態で運を天に任せ、リスキーな賭けに身を委ねたのだった。》
安保法制やメディア規制には熱心な安倍政権だが、一枚看板の拉致問題でどれほどの努力をしているのか。
時間がなく、はやく打開をめざすべきはこちらのはずだが。