特定の方向のある、なしくずしの変化が

takase222015-04-28

すずらん水仙
ドウダンツツジ、ブルーベリーなど白い釣鐘型の花は楽しい。

メディアをめぐる問題に関するニュース二つ。
まず、NHK「クロ現」のやらせ問題について。
《報道番組「クローズアップ現代」のやらせ疑惑で、NHKは28日、「事実のねつ造につながる『やらせ』は行っていない」としながらも、取材・撮影手法に、「不適切な点が複数あった」などとする調査報告書を公表した。
 これに伴い、取材を担当した大阪放送局・報道部の男性記者(38)を停職3か月にするなど、5月7日付で計15人の懲戒処分を決定。籾井勝人会長ら4役員が、報酬の10〜20%を2か月、自主返納することを申し出た。
 問題の放送回は、昨年5月14日の「追跡“出家詐欺”〜狙われる宗教法人〜」。多重債務者が、ブローカーを介し出家して名前を変え、融資などをだまし取る手口を紹介した。番組でブローカーとされた男性が3月、「やらせがあった」と週刊誌で告発。NHKは4月3日に調査委員会を設置し、職員33人や男性、多重債務者ら計43人から事情を聞いた。
 男性は「自分はブローカーではない」とし、「記者から演技の依頼があった」と主張していた。調査委は「打ち合わせをする時間はなかった」などとして、演技指導を否定。記者が意図的または故意に、架空の相談の場面を作り上げたとは言えず、「やらせ」は行っていないと判断した。
 一方、男性をブローカーとする「裏付けはなく、今回の調査でも確認されていない」と取材の不十分さを指摘。「断定的に伝えたことは適切ではなかった」とした。もともと知人だった多重債務者の話のみに依拠して取材を進め、周辺取材もしなかったことを問題点として挙げ、「取材や制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする姿勢を欠いた」などと記者の姿勢を批判した。
 さらに、多重債務者が男性に相談する場面の撮影後、記者が「お金の工面のところのやり取りがもうちょっと補足で聞きたい」などと声をかけたことについて、「事実を伝えることよりも、決定的なシーンを撮ったように印象づけることが優先された」などと指摘。複数の場面で、過剰な演出や不適切な編集があったと認めた。多重債務者は記者が取材した他の番組にも出演していた。》(読売新聞)
この報告はおかしい。
「過剰な演出」ではなく、明確に「やらせ」だったはずだ。
もし本当にブローカーだったら、BPOに訴えるわけがない。
「多重債務者は記者が取材した他の番組にも出演していた」といすれば、この二人が仕組んだやらせに違いない。
不祥事につけこんで、権力がNHKの番組作りに手を突っ込むことは許されないのだが、きちんと検証ができないNHKに毅然として介入をはねのける姿勢は期待できない。

一方、テレビ朝日の吉田慎一社長は、きょう定例会見で報道ステーション」の問題に触れた。。
テレビ朝日は、先月放送されたニュース番組でコメンテーターとキャスターの間でニュースと直接関係のないやり取りがあった問題で、不適切な放送の結果責任があるとして、会長や社長ら3人が役員報酬を一部自主返上するとともに、社内処分として番組の担当部長ら3人を戒告としたことを発表しました。
この問題は、先月27日に放送されたテレビ朝日の「報道ステーション」の中で、コメンテーターで経済産業省出身の古賀茂明氏が番組を降板することになったと発言したうえで、「官邸の皆さんにはものすごいバッシングを受けてきた」と述べるなど、キャスターとの間でニュースと直接関係のないやり取りを繰り返したものです。
(略)不適切な放送の結果責任があるとして、早河洋会長と、吉田社長、報道局長の3人が役員報酬の1か月分の10%を自主返上するとともに、社内処分として27日付けで番組の担当部長や担当プロデューサーら3人を戒告としたことを明らかにしました。
吉田社長は会見で「不適切な事態に至ったことについては深く反省している。混乱を防げなかった結果責任があり、改めておわびいたします」と述べました。》(NHK)
古賀氏の行動については、私は肯定できない。
公共の電波を使ってやることではないし、録音したものを出すとか出さないとか言っても、視聴者には全く分からない。
結果として、権力との緊張関係を保つべしと考えるテレビ局内の人々の立場を悪くすることにもなるのではと危惧する。

少しづつ、しかし、別の見方からは、かなりのスピードで世の中が動いているのを感じる。
3月まで「報道ステーション」のコメンテーターだった恵村順一郎氏(朝日新聞政治社説担当)が書いた評論(朝日新聞24日)にうなづかされるものがあった。
《目に映る話は大きくないかもしれない。けれど、その底流にこそ目を凝らしたい。
 自民党テレビ朝日とNHKの幹部を呼び出したこと。
 福島瑞穂参院議員の「戦争法案」との国会発言に、自民党が修正を求めたこと。
 7年前、89歳で亡くなった評論家、加藤周一の言葉を思い出す。
 ――二・二六事件以後真珠湾までの東京。日常の生活に大きな変化はなかった。衣食は足り、電車は動き、六大学野球のリーグ戦もあった。
 「その背景の見えないところで、どういう圧力や取引や『自己規制』が言論機関に作用していたかは、当時の私には知る由もなかった。しかし報道言論の表面にあらわれた変化、一見おだやかな、なしくずしの変化に、特定の方向のあることだけは、私にも見誤りようがなかった」

まるで、今の時代のようである。
メディアに関わるものが自戒するのはもちろん、みながメディアの振る舞いをより注視すべきだと警鐘を鳴らしている。