「夢の病院」で知った民主主義の原点

takase222015-04-23

もう、卯の花が咲いている。清々しい。
このところ、「ガイアの夜明け」の編集で陽のあるうちは室内にこもっていたので、久しぶりに外に出ると、一斉に花々が咲いたように見える。
季節のめぐりの速さにも驚く。

徹夜が続いたから、きょう一日くらいゆっくりしたいな、と思ったが休めない。
私の担当の番組が26日(日)、そして5月3日(日)と立て続けに放送される予定なのだ。きのうときょうは26日放送の番組のプレビュー、そして予告と宣伝の編集。
このブログは、編集スタジオでスマホで書いている。オペレーターさんが、技術的な作業をやっているときなど、けっこう細切れの待ち時間があるのだ。

今回の作品には反省点が多かったが、愛知県の南医療生協と岡山県の真庭バイオマス発電所の二つを紹介できたことは嬉しい。
名古屋市緑区にある南生協病院は、生協組合員の要求を最大限盛り込んで2010年にできた"夢の病院"だ。
組合員はどんな病院を作るか、千人会議という毎月開かれる集会で4年近くも議論した。
当時出た要求項目は多岐にわたり、プールが欲しい、病院の壁を壁登りできるようにせよ、といった、とんでもない意見まであった。
回転ドアはやめてほしい、階段を上らないでロビーまで行けるようにしてほしいなどの細かい注文もあり、これらはちゃんと実現していた。
45回、のべ5200人が参加しての議論の過程で、設計図を何度も書き直したという。
「民主主義とは効率の悪いもの」を地で行くような、一見壮大な無駄。
しかし、こういう過程を経たからこそ、組合員は自分たちの病院だと実感し、誇りに思う。そして、出資金を積み立てて財務を支え、自らボランティアとなって運営を助けるのだ。

南医療生協の成瀬専務理事に、「勝手に好きなこと言わせたら収拾がつかなくなるんじゃないですか」と聞くと、「大丈夫です、必ずしかるべきところに収まります。私はこれまでの経験から、組合員を信頼しています」と言う。
なるほど、民主主義とはこの信頼がベースにあってはじめて機能するのか、と目を開かれた思いがした。
話を聞きながら、ふと思い浮かんだのは、宮本常一のある村の寄り合いの描写だった。
(つづく)