身代金の要求期限を政府はきょう午後2時50分とみていたが、まだ状況は変わっていない。
《人質2人の安否はなお不明のままで、安倍晋三首相は同日(午前)、閣僚らに「内閣を挙げて人質の解放に全力で取り組んでほしい」と指示。早期解放を目指し、外交ルートを通じて情報収集などを進めている。》
《岸田文雄外相は記者会見で「早期解放の要請が『イスラム国』に伝わるよう、メッセージを発信していく」と述べた》(朝日新聞)
これらは5か月前にやるべきだったことではないのか。
直接に接触がないとしても、さまざまなメディアで、イスラム国に届くようにメッセージを発することはできるはずだが、政府はこれすらやっていない。
かわりに民間から、中田考さん、ビジュアルジャーナリスト協会、イスラミックセンタージャパンなどがアラビア語、英語などで直接にイスラム国に向けて発信している。
(中田さんの昨日の声明はアラブ圏でテレビに流れている。https://www.youtube.com/watch?v=OVf8g8wNL7k&feature=youtu.be)
イスラミックセンターの声明は「我々は、イスラム国が重大な過ちを犯しているとみなしています。そして、イスラム国が良識的な意見に耳を傾け、人質を即座に且つ無条件で解放するように要求します。」と堂々たるものだ。
そして、その「理由」をいくつも挙げたなかに、こんな文面がある。
「・日本では、我々イスラム教徒は平和的に過ごしています。欧米諸国で見受けられる様な、イスラム教徒に対する差別やハラスメント、そして屈辱を受けるといったことも、日本ではありません。ヒジャーブ(頭につけるスカーフ)やニカーブ(目以外を覆い隠す格好)をしたイスラム教徒の女性に対して、危害を与えるといったような事例は一つもありません。
・日本にいるイスラム教徒は自由に宗教活動を実践しています。モスクを建てたり、イスラム教の啓蒙活動を行う際に、政府から干渉を受けることもありません。」
https://m.facebook.com/islam.japan/posts/802492113156463
多様性を受け入れる公正な社会を築くことが、結果として国家の安全保障になるのだな、と気づかされる。言われてみると、日本ではイスラム教徒へのヘイトスピーチは聞かれない。
百家争鳴の議論のなか、内藤正典教授(同志社大学)がツイッターで述べる提言にはうなずかされるものが多い。きょうはその一部を紹介したい。
「政府高官が、米、英、仏と人質問題で連帯を示したことは、解放を難しくする。」
「こういう事件に際して、マスメディアが注意すべき点。人質事件は人質解放という一点に焦点を合わせて報道する。どうでもいいことに時間をかけて報じると、犯行グループ側から「不慣れで操りやすい」とみなされる恐れがある。あるテロ多発国のジャーナリストに言われた。」
「日本がムスリムを疎外してこなかったことは、逆に最も強調して報道すべきこと。在日ムスリムの声も。ただし、「あんな奴らはムスリムじゃない」と言いたい気持ちは痛いほど分かるが、在日ムスリムの皆さん、どうか、その発言はこらえてほしい。」
「ニュースからバラエティに至るまで、それを考えて放送してほしい。身代金の話は絶対にするべきではない。人質個人についても絶対に報じるべきではない。何が弱みとして利用されるか分からない。逆に政権のミスは指摘すべき。政権が対応を誤っても国民は気づいていることを報じるのは相手を躊躇させる。」
メディアもまた問われている。
明日は、よいニュースが聞けますように。