安倍独裁に沈黙する自民党

takase222014-06-29

雨が止んだので傘を持たずに外に出たら、ザーッときてずぶぬれになった。
どんよりとした空の下、ルリマツリの花がすがすがしい。
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きのう映画『収容病棟』(監督:王兵ワンビン)が封切りになり、さっそく観に行った。
http://moviola.jp/shuuyou/comment.html
中国雲南省の精神病院で3か月撮影した映像だ。
前編・後編の2本立てで上映時間が4時間もあるが、前編だけ観てきた。
《2010年に「精神病患者1億人」と当局が発表以来、経済成長がもたらす急激な社会変化によって、中国の精神病患者は増加の一途をたどっている。その実態はベールに包まれているが、この病院には、200人以上の患者が収容され、中には入院して20年以上になる者もいる。患者たちは多種多様で、暴力的な患者、非暴力的な患者、法的に精神異常というレッテルを貼られた者、薬物中毒やアルコール中毒の者、さらには、政治的な陳情行為をした者や「一人っ子政策」に違反した者までもが、“異常なふるまい”を理由に収容されている。その様子からは治療のための入院というより、文字通り「収容」という言葉が正しく思えてくる。》(HPより)
ナレーションも音楽もなく、カメラはひたすら収容されている人々を追う。汗や尿の臭いが映画館内に漂ってきそうな息苦しいほどの臨場感。誰が正常で誰が精神病なのか分からないが「ここにいたら精神病になってしまう」とつぶやく男がいた。いったいどんな素性の者なのか。画面に出てくるいろいろなことが気になる映画である。
その前に、そもそもこういう映像がなぜ可能になったのか、登場する「患者」たちがどのように撮影に応じたのか、制作の背景を知りたくなった。決して海外に誇れるしろものではないはずの精神病院を、監督が中国人だとはいえ、よく撮影させたものだ。
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同郷の知り合いから「メディアをみんなで育てるサイト」『メディアゴン』というのが6月からオープンするので、そこに原稿を書いてくれと頼まれた。
こっちはいつもドタバタしてるタコ社長だし、サイトを汚すことになるとも思ったが、義理ある人からのたっての要望なので、定期投稿は無理だけれど、書ける範囲内で協力させてもらうことにした。
http://mediagong.jp/?cat=20
それできょう寄稿したのが以下だ。
遅すぎる原稿かもしれないが。

《異常な政局である。
安倍内閣集団的自衛権行使容認に向けての動きがどんどん前倒しされ、7月1日に閣議決定の予定だ。原稿を書いているきょうが6月29日だからもう遅いが、とんでもないことが進行中だという指摘だけはしておかなくては。

いま問われているのは、「改憲」か「護憲」かではない。また、集団的自衛権を認めるか認めないかでもない。ましてや保守と革新の対立などでは全くない。
事実上の改憲、しかもわが憲法の柱ともいえる第9条を、一つの内閣の解釈という方法でやっていいのかということだ。
憲法は「国民は守らなくていい」。憲法が、国民が従うべき法律と大きく違うのはここだ。では、誰が憲法を遵守すべきかというと、「権力」つまり国家の側である。だから第99条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と明記するのだ。
柄にもなく憲法講義のようなことを書くのは、国民が権力を制限するために憲法があるという基本的な合意を欠いたまま事態が進むことに危機感を持つからだ。
憲法を遵守すべき存在である内閣が、憲法の重要規定の解釈を変えようとしている。これが立憲主義を乱暴に踏みにじる行為であることは言うまでもない。
民主国家であっても暴走する可能性があることは、ナチスが選挙を通じて独裁化していったドイツなど現実の歴史が教えている。数を頼んで、憲法秩序を掘り崩そうとしている点で、安倍内閣は「ナチスばりの」という形容詞をつけられても仕方がないだろう。
国民が何が問題なのか分からないままに、安倍首相は、恐ろしいスピードで突っ走っている。特定秘密保護法案のときもそうだが、急ぐのは、むしろ国民に知らせる時間をおかないためのようだ。

不思議なのは、自民党の中からさしたる反対や疑問の声があがらないことだ。異論を持つ自民党の政治家は、党内で議論するのではなく、正反対の左派系メディアに登場する。
共産党の「しんぶん赤旗」紙上では、加藤紘一古賀誠野中広務がそれぞれ安倍首相への批判を展開。雑誌『世界』には5月号以降、村上誠一郎衆院議員)、河野洋平野田聖子(党総務会長)、古賀誠らが内閣の暴走を諌めている。
轟轟たる議論が起こり、党分裂にまで至ってもおかしくないほどのテーマであるはずなのに、まさに粛々と安倍首相の狙うスケジュールが進行する。また、メディアも一部を除いて妙に静かだ。

あとになって、安倍内閣の所業は、日本の政治史、憲法史における大きな転換点だったと記録されることになるだろう。
この異様な時代、政治が、メディアが何をしたのかを覚えておきたい。》