憲法の墓を掘る安倍首相

takase222014-07-02

集団的自衛権の行使容認。
きのう、安倍首相はためらわずにやってしまった。
「明白な危険」があると判断すれば、海外でも武力行使ができるというのだ。

写真はきのうの朝。市民団体が首相官邸(向こう側)前で抗議行動をしていた。一昨日の夜が最も多く、およそ1万人が国会周辺で抗議したという。中高年がほとんどだ。
原発事故の後の反原発運動の盛り上がりには遠く及ばない。

若い人には、関心を持たない人が多く、うちの娘たちなど、抗議行動がテレビで放送されてはじめて「何がどうなってんの」と尋ねてくる。大衆運動もメディアも大事なのである。遅すぎる結果にはなったが。
以前書いたように、6月末のNHKの世論調査では、「日本が集団的自衛権を行使できるようにすべきだ」と「すべきでない」がそれぞれ26%で「どちらともいえない」が41%(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140609/k10015090551000.html
国民の多くは、集団的自衛権の行使についてよく分かっていない実態がある。分からないうちにやってしまおうという安倍首相の作戦があたったともいえる。
また、安全保障や軍事には関心を持たなくていいんだという風潮も、運動が低調な背景になっているかもしれない。

繰り返しここで書いてきたように、最も重要な問題は、第9条を守るか変えるか、集団的自衛権行使がいいか悪いかではないと思う。
憲法の遵守を義務づけられている権力者が、自分で憲法を自由に解釈して勝手なことをやろうとしていることが恐ろしいのだ。
憲法学者小林節・慶応大学教授は第9条を変えるべきと主張する改憲論者だが、今回の安倍内閣の決定を激しく批判している。
憲法9条を普通に読めば、海外派兵を想定はしていない。そこに踏み込めば、もはや憲法解釈の許容範囲を超えている。それは憲法の破壊であり、単なる憲法違反だ」と。(朝日新聞2日朝刊)
だから世論調査するなら、その質問はこうすべきでは。
「いまの憲法第9条の下で他国のための武力行使ができる」と内閣だけで決めていいと思いますか?
これなら、おそらく8割くらいの反対になるのではないか。

今後は関連立法をめぐる議論があり、どこかの段階で違憲訴訟も起きるだろう。04年の自衛隊イラク派遣をめぐり、愛知県の市民が「平和的生存権を侵害された」として国を提訴し、名古屋高裁は08年に自衛隊の活動の一部を9条違反と判示している。

そのイラクだが、隣国シリア情勢と連動して、内戦の犠牲者が過去最高にのぼって心配な事態になっている。勢力伸長が伝えられるイスラム過激派は国家樹立を宣言した。
イラクで政府軍と戦闘を続け、一部の地域を制圧したイスラム過激派組織は既存の国境の枠を超えた「イスラム国家」の樹立を宣言し、勢力の拡大を誇示しました。
国際テロ組織「アルカイダ」の流れをくむイスラムスンニ派の過激派組織「イラクとシリアのイスラム国」は両国の政府軍と戦闘を続け、このうちイラクでは第2の都市モスルを制圧するなど勢力を広げています》(NHK 6月30日)

今からみれば、イラク戦争では、「サダム・フセイン大量破壊兵器を所持している」という米国政府の捏造情報によって世界が騙されたことがはっきりしている。そして、その戦争の結果が、手の付けられないような今日の悲劇だ。はじめから終わりまで間違った戦争だったのだ。
この状況にアメリカはイラクに再びコミットせざるをえなくなっている。
オバマ大統領は30日、イラクへ新たに約300人の米兵を追加派遣し、ヘリコプターなどを追加配備したことを明らかにした。すでに派遣を決めた約300人の軍事顧問とは別に、バグダッドの米大使館や関連施設、国際空港などの安全確保の任務に就く。」(朝日)
イラク情勢を受けて、石油の価格も上がった。
きな臭さがここそこに漂う世界に、これから日本はどうかかわっていくべきか。