14日の土曜日は、杉並区立和田中学校の公開授業に呼ばれた。
5月末にャンマーについての「よのなか科」の授業に招かれて以来、これが2回目。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20130531
今回は北朝鮮による「拉致問題」。横田さんご夫妻と一緒に話をする。
写真は校長室のお二人。お二人ともお歳を感じさせる。とくに滋さんは歩くとき足元がおぼつかない。お二人と会うたびに一日もはやい解決をと祈らないではいられない。
授業の場所は体育館で冷房がなく、かなり暑かった。体育館に冷房が入っているのは、東京都では二つの自治体しかないそうだ。
まず、「めぐみ」という25分のアニメを上映。このアニメにはちょっと意見もあるのだが、横田めぐみさんの拉致の顛末をコンパクトに紹介してあり、ごく普通の家庭を襲った悲劇の恐ろしさを分からせてくれる。このアニメは無料でダウンロードできるので、未見の方はぜひみてください。http://www.rachi.go.jp/jp/megumi/
生徒への最初の設問は、「拉致によって家族は何を奪われたと思うか」。
体育館には全校生徒460人に父兄席200が埋まって立ち見が20人ほど出たから、教職員や取材関係など入れて700人はかるく超えていただろう。その中で手を挙げて発言するのは勇気がいるだろうに、次々に手を上げ、「しあわせ」、「家族の絆」、「未来への希望」などと答えていく。
「どうしたら拉致問題を解決できると思うか」という設問には、
「やはり拉致被害者がいる韓国と協力する」、「朝鮮人と話し合う」、「北朝鮮をもっとよく知る」などにまじって「日本中の海岸に防犯カメラを設置する」というのまであった。
私が、拉致の手口を説明したさい、遠く離れた場所で同時に拉致されるという事例もあったことに触れた。1978年8月12日の夕方、新潟県・佐渡で曽我ひとみさん母娘が、鹿児島の浜辺で市川修一さん、増元るみ子さんのカップルが拉致されている。この時期、北朝鮮工作船はものすごい頻度で、日本領海内への侵入を繰り返していたことになる。きっと、その生徒は海岸線を安全にしようと思ったのだろう。
私は、話の最後に、いまヘイトスピーチが問題になっていることを挙げて、「北朝鮮に拉致というひどいことをされて、『北朝鮮の人は嫌い』という感情になるかも知れないけれど、そこでちょっと考えてみて」と付け加えた。
北朝鮮には、まともな選挙も議会も自由なメディアもなく、自国が外国人を拉致していること自体知らされていない。国民の多くはまともに食べる事さえできない。北朝鮮の人々も犠牲者であって、拉致を解決して北朝鮮をまともな国にすることは、北朝鮮の人々が幸せになる道でもあるのです、と言って話を終えた。
会場にはTBSが来て11時45分から、この公開授業のニュースが流れるのを、私たちは校長室で観た。テレビ新潟も取材に来た。
きょうは9.17小泉訪朝から11年になる。あの日の衆議院議員会館での被害者家族の会見を思い出す。「8人死亡」の報に、取材していた私は泣いてしまった。
廊下で、テレビ新潟(日テレ系)の岡田浩人記者、新潟テレビ21(テレ朝系)の馬場記者と顔を合わせたら、二人とも泣いていたことを憶えている。
そして会見がはじまって、横田早紀江さんが話し出した。
「めぐみのことを愛してくださって、いつもいつも取材して下さって、めぐみちゃんのことをいつも呼び続けてくださった皆様に、また祈っていてくださった皆様に心から感謝をいたします。まだ生きていることを信じ続けて戦ってまいります」。
ここでまた、どっと涙があふれてきたのだった。
あのころ一緒に拉致問題を取材した人たちは「戦友」のような連帯感を感じる。
で、和田中学に取材に来たテレビ新潟のクルーに「岡田さん元気?」と聞くと、去年辞めて独立し、野球を中心に地域スポーツの取材をするフリーランスになっているという。あとで検索するとHPもあった。
http://www.niigatayakyu.com/about
東京ではなく、新潟でフリーで独立するというのは勇気ある決断だと思う。最近、『最終回は、終わらない 日本文理高校甲子園準優勝の真実』(ベースボールマガジン社)という本を出している。いい仕事をしているようでたのもしい。
おれももがんばらなくちゃ。