臆病で怖がりが戦場に行く

takase222013-07-14

明治大学でメディア論の講義を2回担当した。
義理ある人から頼まれたのと若い人に自分の経験を伝えるのも意味があると思って引き受けたのだが、フリーランスの生き方をテーマに、戦場ジャーナリスト安田純平さんと常岡浩介さんにゲストで来てもらった。
先週、夜7時半に講義が終わって、いっぱいやろうと蕎麦屋に入った。私は生ビール、ムスリムの常岡さんはノンアルコール・ビールで乾杯。
ラマダンなので、朝3時の礼拝の後から食べ物も飲み物も摂っていなかった」と常岡さん。
あ、ラマダンだったのか。10日からだという。
そういえば、先日、新聞にエジプトの事態で「ラマダン入り後も両派に大規模な動き」などという見出しがあった。また、エジプト出身の力士、大砂嵐がラマダンにもかかわらず勝ち進んでいるということが話題になっていた。

常岡さんは長崎放送に就職し、記者を数年やってからやめてフリーになった人で、その後の経歴はこうだ。
2001年、グルジア政府に一ヶ月間抑留。
2004年、ロシア、イングーシ共和国でKGBに16日間拘束。
2010年にアフガニスタンで政府系武装勢力に5ヶ月間誘拐されるも生還。
2011年、パキスタン諜報機関に6日間拘束され、デング出血熱に罹患。
これだけ拘束されるとは・・・思わず笑ってしまった。
普通なら、もうコリゴリ、となるところだろうが、常岡さんは根性が違う。
アフガンで拘束中、犯人グループが常岡さんの映像を公開したが、そこで彼は「犯人側の要求には決して応じないで下さい」と日本語で語っていた。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20100819
殺されるかもしれない状況下にあるのだ。「犯人を刺激しないでください」「なるべく要求どおりにして」と言ったとしても責められないだろう。
常岡さんという人物に興味がわいて『常岡さん、人質になる』という本(マンガ、2011年、エンターブレイン)を読んだ。
http://www.enterbrain.co.jp/pickup/2011/hitojiti/
常岡さんは都内の一軒家に女性4人と猫2匹と同居する変わった暮らしをしているが、この本は、常岡さんとその同居人が主要執筆者だ。
それによると、常岡さんは、大学時代は「少女漫画研究会」に属するオタク系で、スポーツも苦手で、日本にいるときは引きこもり。
「そもそも人一倍臆病な性格で怖いの大嫌いです。取材に出発するときは、成田空港に向かう電車の中で、もうホームシックになっています」という常岡さんが、なぜ戦場ジャーナリストをやっているのか。
(つづく)