常岡さんのツイッターの謎

12日の「サンデーフロントライン」で常岡さんの事件を緊急特集することになり、9日、常岡浩介さんテレ朝に来てもらった。
解放後はじめて会ったが、元気そうで安心した。テレ朝の映像では憔悴した感じだったので心配したのだが。
さっそくインタビュー。常岡さんは恐ろしくよい記憶力の持ち主で、ディテールがあまりに面白く、2時間では終わらない。夜、常岡さん、彼のお母さん、ジャーナリストの久保田弘信さんと一緒に夕食をとったあと、またテレ朝に戻って深夜1時半まで追加のインタビューをした。
3日のツイッターについての疑問が解けたので、報告しておきたい。結果から言うと、私の推測(交渉を焦る犯人のメッセージ説)は完全に外れていた。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20100904
以下は、7日の外国特派員協会での会見より(ツイッター総研のサイトから引用)。
常岡さん:
9月3日にツイッターにアクセスしたのは、そのときに私を拘束していたアブドゥルアジドという下級司令官の携帯電話を使って、GPRSでインターネットにアクセスして、そこからブラウザ上から書き込んだというものです。

(*)GPRSGSM方式の携帯電話網を使ったデータ伝送技術。第2.5世代(2.5G)と呼ばれる技術の一つ。
彼はインターネットという言葉は知っているが、どういうものか知らない。その3日ほど前にノキアのN70という、彼らの中では非常に最新モデルの携帯をどこからか手に入れて持ってきまして、持ってきたけれども使い方が判らない。「シャミル、これわかるか?」と聞いてきたものですから、いろいろ説明していました。
(*)ノキアN70:2005年に発売された携帯電話の機種。軽量の200万画素カメラ携帯「Nokia N70」。
(*)シャミル:イスラム教徒である常岡さんのイスラム名。
で、これはチャンスだ! と思ったもんですから、「この携帯はインターネットを使うのに最適なんだ」というふうに彼に、事実だから騙してはいないと思うんですが、言いまして、「インターネットというものを使ってみたい。使えるようにしろ」というのが彼の命令で。
彼らの支配地域は携帯電話の3つの会社の電波が飛んでましたけども、そのうち2つの会社、3つともか、GPRSのシステムがちょうど始まったばっかりでした。
で、携帯会社のカスタマーケアに何度も電話をして、アクティベーションの設定をしまして、9月3日にようやく繋がった。

(*)アクティベーション:機能を有効にすること。この場合は携帯電話でインターネットを使えるようにする認証手続き。
繋がったはいいけど、インターネットとはなんぞやをよく知らない彼らは「どうやったらそれでアザディラジオが聞けるんだ?」とかですね、そういうことを聞いてきまして、「まずグーグルにアクセスしてアザディラジオとここに書いてみなさい、そうするとアザディラジオのウェブサイトが出てくるから」
「最近はツイッターというのが一番重要なのだ!」と言いまして、「それは何だ?」
「ここに一言書くと日本のたくさんのジャーナリストに伝わるんだ」ぐらいのことを言いまして、「やってみろ」と。
本人は今も騙されたとは思ってない。

(*)アザディラジオ:azadi radio、自由欧州放送(アメリカによるラジオ)のアフガン支部。Radio Free Afghanistan - Wikipedia

インタビューでもう一つ不思議に思っていた疑問が解決された。
5月中旬に拘束中の常岡さんから長崎の実家に電話があった。常岡さんのお母さんが日本語で自由に話せたという。
これも単純な話だった。拘束されていた村の近所の人が、常岡さんに同情して、自分の携帯を貸してくれたのだという。彼は現地のダリー語ペルシャ語の一種)を話すので、監視役の兵士や村人が親近感を持ったようだ。
家族への電話やツイッターなど、いちいち「それはどんな意味があるのか」と考えてきたことがみなはずれていた。
インタビューの核心は12日の番組で。