安田さん事件で日本政府「全力で対応」・・ホントかな?

安田純平さんの拘束事件に関して、昨日から本格的な報道が続いている。
外国通信社が、日本発で、どんどん発信しているが「情報に信憑性がないということを書いてくれない」と常岡さん。となると、世界に「身代金要求のカウントダウン」という誤った情報が広まる。そして、そのニュースは当然、拘束している犯人側にも届く。このことが、今後の安田さんの扱いにどう影響してくるのか・・・そこが心配だ。
実は、常岡さんや私は、安田さんが武装集団に拘束されたことを7月はじめには知っていたのだが、拘束した者たちの意図が分からなかったので、へたに騒ぐのはよくないと黙っていた。マスコミが気づきはじめたときには、テレビ局や雑誌編集部にいる知り合いに報道しないように頼みこんだ。
7月22日に、海外の複数の新聞にYASUDAがシリアで行方不明と出てそれなりに知られるようになったが、依然、身代金要求など「犯人」側からのコンタクトが全くなく、家族も沈黙を守ってきたため、マスコミとしても大きな記事にしにくかった。それが今回は、間違った情報で大きなニュースになってしまったのだ。

「声明」を出したのは、「国境なき記者団」のアジア太平洋デスク、ベンジャミン・イシュマイル氏。きのう、クリスマス休暇でロンドンに着いたところを常岡さんが電話で捕まえた。
すると、「カウントダウン」情報は、ニルス・ビルト氏に吹き込まれたことをあっさり認めたという。

騒ぎのもとはやはりニルス・ビルト氏だった。
常岡さん、さっそくニルスとやりあった。
昨夜深夜、常岡浩介さんがツイート。
《たったいま、ニルス・ビルト氏がぼくにメールしてきた。「身代金要求が嘘であるかのように語っているようだが…」
こちらからは、お前は日本政府の代理人でも安田くんの家族の代理人でもなく、お前の行動は犯人グループを誤解させている可能性が高い。安田くんの生命を危険に晒す、と伝えました。》
《その後、ニルスは3回メールしてきて、こちらに反論してきたんだけど、しまいに「お前にんなこといわれる筋合いはない!」とブチ切れてきたので、「いや、メールしてきたの、おまいじゃん」と返信して終了。
ニルスが掻き回した状況をどう収拾したものか、収拾が可能なのか、こちらが泣きたいよ。》
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ビルト氏がいいかげんな情報で事態を混乱させる一方で、日本政府は、自国民の救出のために、いったい何をしているのか。
官房長官は、24日、記者団にこう答えた。
《邦人の安全確保は政府の重要な責務でありますので、さまざまな情報網を駆使して全力でいま対応につとめているところであります。》
思わず笑ってしまいました。
安田さん失踪にかかわる事情をもっともよく知っている常岡さんに、外務省も警察も一度もアプローチしてこないのはなぜか。安田さんの家族にも電話一本してきただけ。それでよく「さまざまな情報網を駆使して全力で」云々と言えるものだ。
このあたりの対応は、北朝鮮による拉致問題や「イスラム国」邦人殺害事件のときとそっくりだ。政府が邦人保護に努力しているとはとても見えない。
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さて、これから安田純平さんはどうなるかだが、ポイントになるのはスペインの動きだ。

実は、安田さんのほかに、同じグループに3人のスペイン人が拘束されている
先ほどあげた7月22日の報道というのは、スペイン発のニュースだった。
3人の消息不明を伝えた後、「4人目」として日本人の安田さんも行方不明だと報じている。
7月21日、スペインジャーナリスト連盟の会長、エルサ・ゴンザレス(Elsa Gonzalez)氏は、スペイン人のフリーランスジャーナリスト3人(写真)が、シリアで行方不明になっていることを明らかにした。
その3人、Jose Manuel Lopez、Antonio Pampliega 、Angel Sastreは7月10日、一緒にトルコからシリアに入り、アレッポ北西部で取材していたという。3人は7月12日を最後に連絡が途絶えた。安田さんが消息を絶った6月23日からまもなくのころ。場所も近接している。

いま、スペインでは、3人の救出に向けた努力が続いている。
スペインは、2013年に「イスラム国」(の前身)に拘束されたスペイン人ジャーナリスト3人を半年がかりで救出するのに成功している。今回は相手は「イスラム国」ではないが、同様に精力的に交渉していると思われる。今後の推移に注目したい。
(写真はhttp://www.theguardian.com/world/2015/jul/21/three-spanish-journalists-missing-syria-feared-kidnapped-islamic-stateから)