『神社は警告する』が出ました!

takase222012-11-23

きのう、講談社から本が届いた。
『神社は警告する〜古代から伝わる津波のメッセージ』。
この本、ほぼ一年がかりだった。去年のTBS「報道特集」で放送した内容を、また調べ直して三人(私とディレクターの吉田、そして番組のきっかけを作った熊谷)で書いたのだ。
本屋に並ぶのは、来週中ごろかららしい。アマゾンでも売っていますので、ご関心のある方はぜひお求めください。
では、本の宣伝で、前書きを抜粋で紹介します。

神さまは、ほんとうにいるのではないか―

宗教とは全く無縁の男から、そんな話を聞いたのは、去年の初夏のことだった。
 「被災地がどんなにひどい状態か、東京の人には分からないと思いますよ。復興なんて、全然始まってもいないですよ」
6月中旬、私は、福島に住む熊谷航(わたる)の話に耳を傾けていた。久しぶりに上京した機会に二人で飲もうということになったのだ。
熊谷は、私が主宰するテレビ番組制作会社「ジン・ネット」で、五年前までADとして働いていた。大学院で海洋環境を研究していた熊谷は、報道の仕事がしたいと「ジン・ネット」に二年ほどいたが、「やっぱり海に戻ります」と言って辞めていった。今は故郷の福島市で海洋調査の仕事をしている。
(略)
熊谷が、津波被災地の実情に詳しいのには理由がある。
大震災の後、彼は、大学院時代の恩師や、地元・福島の都市計画コンサルタントなどと一緒に福島県の太平洋側の相双地域に入り、津波浸水域の被災状況を調査していたのだ。
相双地域では、原発事故の影響で放射線への恐れがあったため、震災から一ヶ月ほど経っても津波の浸水高調査すら行われていなかった。正確な状況を知るには航空写真では限界があり、人間が実地に目視する作業が必要になる。そこで、熊谷たちは、車で行ける所まで行き、あとは徒歩で津波がどこまで遡上したかを調べていったという。

熊谷が、ふとビールを飲む手を止め、あらたまった顔をしてこう言った。
「高世さん、神様って、本当にいるんじゃないかと思うんですよ」
突然、いったい何を言い出すのか。
もともと理系の、とても合理的な考え方をする男である。驚いて彼の表情を見たが、目は真剣で、ふざけて発した言葉ではなさそうだった。
熊谷はわきに置いたカバンの中から、書類ファイルを取り出し、一枚の紙を抜き取ってテーブルに置いた。
「これを見てください」
(略)
「神社は、浸水線のぎりぎりで助かっていたんです」

「実際に津波がどこまで来たのかを確認しようと、浸水線、つまり波の押し寄せた跡を歩いて辿って行くんです。するとなぜか神社が現れるんです。
一つ過ぎてしばらく行くと、別の神社に出くわす。その繰り返しでした。
すぐそばまで津波が押し寄せたのに、神社はあやうく助かっている。そういう場所がとにかく多い。不思議でなりません」
熊谷は一気に話すと、ビールをぐいと喉に流し込んだ。
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というふうに本ははじまり、この都市伝説のような謎を追っていくのだが、結末はどうだったのか。
(つづく)