小さな巨人中村哲さん

takase222012-08-04

きょうは、福岡県朝倉市で、あこがれの中村哲先生にはじめてお会いした。
これまで何度か中村先生についてはこのブログで触れてきたが、30年近く前に医師としてパキスタンで活動を開始、今はアフガン東部で水路を建設し沙漠を緑に変えるという大事業を一人で行っている。日本人の宝であり偉人というしかない。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20110119
やっていることはすごいのだが、とてもおとなしい印象で、低い声で控えめに話す。小柄で背は160センチないくらい。まさに「小さな巨人」。
きょうは朝倉市で講演会がある機会に、山田堰の傍で、日本人の自然との付き合い方、伝統的農業技術のすばらしさについてインタビューしたいと申し込んだのだった。

山田堰とは200年以上前に作られた歴史的農業遺産で、中村差先生は、このすぐれた工法を学び、アフガンそのまま持ち込んでいる。
http://yamadazeki.net/template_a-5-9
中村先生とは、まず山田堰土地改良区の事務所でお会いし、関係者と一緒にお茶を飲むことに。ところが先生、腰が痛いとのことで、ソファには坐れないという。悪路を車に乗ったり、自分で重機を動かしたりしてよくぎっくり腰になるそうだ。
本人はさほど気にする様子もなく、こうした方が楽です、と床にひざまづいて腰を伸ばした姿勢で、平気な顔で煙草を吸っている。治療も検診もせず、栄養にも無頓着なようで、周りが気をもんでいた。先生は自分の健康には関心がないようだ。
先月の九州北部豪雨では、山田堰と堀川用水が水を効果的に逃がし、最悪の事態は逃れたという。
今回の豪雨被害は、昭和28年以来の激しさだったそうだが、今回の特徴は、上流から大量の流木が流れてきたことで、これが被害を大きくしたという。根っこがついたまま流れてきた大木も多く、「あんなのは見たことがなかった」と驚いたと現地の人は言っていた。
また、護岸が石からコンクリートになって、水の勢いがゆるまずにサーっと流れるようになったのもよくないという。
そんな話をしていたら、中村先生が、日本人が自然とのかかわりを間違えてきたと熱っぽく語りだした。
川のそばには、大雨のときに水を逃がす場所があるが、そこに無理な護岸工事をやって団地を建てる。住んではいけないところに住むようになっている。
昔は、森の木を枝打ちし、落ちた杉の葉をたきつけにしていたが、外国から安い木材を買うようになって山の森が荒れ保水力が落ちている。
政治は、まご子の先の代まで考えた施策をすべきなのに、政治家は任期の4年間有権者を喜ばせればいいと思っている。社会の根本がおかしくなっているんです。

巨大な「義憤」をかかえているようだ。このままでは文明は破局に向かうという。
「また、薪に戻りますよ」
話の終わりにこういって、先生はにやりと笑った。
(つづく)