電力自由化を勉強しよう6−変電所増設

takase222012-02-12

朝日歌壇、きょうはお姉さんの梨子ちゃんが佳作に選ばれていた。
妹が「秘密は守るから」と言うウグイスみたいな真ん丸の目で  (富山市)松田梨子
ウグイスみたいな真ん丸の目・・・言われてみれば、たしかにそうだよね、となるのだが、すごいな。
梨子、わこ姉妹に刺激されたのか、このごろ歌壇には、若い人の歌が多い。これは、お母さんが書きとめたのかもしれないが。
ゆうはんは私とママがつくったよほくほくトロリあったかシチュー (京都市)室 文子
きのうのブログに、冬は鮮やかな色がうれしいという話を書いたが、
菜の花にいちごきんかんチーズパン色なき朝の色のやさしさ  (尼崎市)岡本伸香
傾向として、映像的なイメージを表現する歌が増えているような気がする。次は詠われているシーンが印象的に浮かんでくる。
さうぎしゃとおほがたすーぱーむかひたちねぎともふくのかうさするごご (佐倉市)横山鈴子
横山さんは歌集も出しているベテランで、すべてかなで書くのが彼女の流儀だ。
・ ・・・
朝日新聞一面トップに「電力の東西融通拡大へ―50−60ヘルツ変換所増設を支援」の記事が載っていて注目した。
《東日本と西日本の間でやり取りできる電気の量を増やすため、経済産業省は、東西で違う電気の周波数を変換する設備の建設を支援する方向で検討に入った。これまで設備の建設は電力会社任せだったが、建設費を国が補助するといった支援策を考え、増設を促す。
 日本では、周波数が東日本で50ヘルツ、西日本で60ヘルツと違うため、周波数を変換しないと東西での電気のやり取りができない。周波数を変える設備の「変換所」は現在、東西の境にある東京電力中部電力の2社の管内に計3カ所ある。
 だが、変換できるのは計100万キロワットで、全国の発電能力の1%に満たない。昨夏は三つの変換所をフル稼働させて西日本から東日本へ電気を送り込んだが、東日本の電力不足を解消するには力不足だった。(略)
具体策を5月ごろまでに基本計画としてまとめる》
で、きょうは予定を変更して電力自由化の話を書きたい。
日本では電気は、郵便や鉄道などと異なり、完全な自由競争ではじまったことはすでに書いた。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20110419
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20120119
「東京電燈」がドイツの機械で50ヘルツで供給したのに対し、大阪に起業した「大阪電燈」は米国製発電機で60ヘルツの電気を供給。我が国で、今も東西で周波数が異なるのも、民間資本が電気黎明期を牽引したなごりである。
去年の大震災後の「計画停電」のとき、電力会社同士が融通できないことが問題になった。
中部電力関西電力などの電力会社には余剰電力があったのに、供給不足に陥った東京電力東北電力への融通電力量に大きな限界があったのだ。東日本と西日本の間は100万kWしか送れない。
一部のメディアは、この原因を、東日本と西日本で使用している電力の周波数の相違にあるかのように説明していた。しかし、根本の問題は電力会社による地域独占の体制にある。
日本の送電線網は、十の電力会社が分割して所有・運営する。自社の管内では、送電線は網目状に整備され、管内の需要を管内の供給でまかなう、自己完結型の運用を行っている。各社同士をつなぐ送電はというと、1本か2本の送電線(連系線)でしか結ばれていない。津軽海峡の下には、北海道電力東北電力の間を結ぶ「北本連系線」が通っているが、送電可能量はわずか60万kWにすぎない。
東京電力東北電力の間は、たった一本の「相馬幹線」という連系線(500万kW)でしかつながっていない。東北電力管内の福島県東京電力管内の茨城県の長い県境の自治体同士では送電・配電網が断絶しているのである。
日本のこの送電網の姿は、だんごを串に刺したような形になるので「串刺し型」と表現される。
電力会社は、電気を安定的に供給するには今の体制、つまり地域独占方式がよいと主張してきたが、震災は、この「串刺し型」がむしろ電力供給を不安定にすることを明らかにした。
今後の電力不足に備えるためになすべきことは、各電力会社同士を結ぶ連系線を増やして相互の融通量を大きくすることである。きょうの記事のように、東西間にいま3箇所にしかない周波数変換所を多く設置することはその一環として意味がある。
(つづく)