30万円のコーヒー代 2

 番組企画を探しに図書館へ行く。冬、冷たい空気の中を歩くのは気持ちがいい。
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 きのうの続き。
 ブログでは、どんな花が咲いたとか書いていて、ノーテンキに暮らしていると思われているらしい。また、毎日、出張して取材したり書物で勉強しているようなイメージで見られたりもする。実際は、仕事の大半は雑用で、『男はつらいよ』のタコ社長のごとく、「お金」のことを考えている時間が多い。月末は資金繰りで頭を悩ませたりもする。それでも「さわやかに」毎日を生きようと思っている。
 実態を知っている人からは、会社が行き詰まって首をくくる中小企業の社長がたくさんいるのに、君は借金まみれでもよく元気でやってるなあなどと言われるが、借金で命をとられるわけじゃなし。
 それに、窮地にあると、毎日がドラマのように刺激的である。親しい人が去っていったり、盟友と絶交する一方、思いがけない人が助けてくれて感動させられたりもする。2010年秋にそのあたりの事情を書いたことがある。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20101001

ちょっと常識では考えられないような経験もした。
そのころ、テレビ界では有名なプロデューサーに押しかけるようにして会ってもらった。窮地を何とか脱するため、力になってもらえないかと思ったのだ。
その方は、10年以上前に一度仕事をしただけの間柄で、それ以来会っていなかったのだが、恥も外聞もなかった。
するとその方は、とても親身になってアドバイスしてくれ、こんどは向こうから数日後、再び会おうと声をかけてくれた。
場所はあるテレビ局で、そこのエライさんに紹介してくれた。別れ際、その方が「コーヒーでも飲みなさい」といきなり私のポケットに封筒を突っ込んできた。
驚いて「これ何ですか」と私が聞くと、「黙ってとっておきなさい!」とどなって、すたすたと歩き去っていった。
封筒には札束が入っており、数えると1万円札が30枚あった。コーヒー代で30万円・・
その方自身、それほどお金に余裕のある人ではない。どうお礼していいのか分からないまま、有難くいただいた。苦しいときだったので助かった。
「足を向けて寝られない」とはこういうことなのだろう。

その方から年賀状がとどいた。
「厳しい時代ですが、あなたなら必ずのりきれますよ」と書いてあった。
困った人がいたら、私なりのやり方で助け、励まそう。それが、私の「お返し」だと思っている。
そして会社をしっかり立て直して、はやくコーヒー代を差し出す側になろう!