久しぶりに、新宿ゴールデン街で飲んだ。
ここは、昔は、挫折した活動家とかマスコミ業界のうるさがたなどがたむろしていて、絡まれることも多かった。飲み屋のママからから議員になったことで知られる長谷ゆり子さん(たしか社民党)のお店でも飲んだことがあったが、朝方まで、客に議論をふっかけられて閉口した覚えがある。
そういうわけで、ゴールデン街は、ちょっと苦手で、長いことごぶさたしていた。
ところが驚いたことに、きょう入った店では、普通のサラリーマンの集団が騒いでいた。すっかりカジュアルな普通の飲み屋街だ。そして、20代の可愛い女の子がカウンターをしきっているではないか!隔世の感があった。10年前には、「若いママ」といったら酸いも甘いも噛み分けた40代の女性だったのに。
店のマスターに聞いたら、ゆり子さんは脳梗塞で車椅子だという。時代はどんどん変わっていくのだなあ。
きょうは、うちの若いスタッフと飲んだ。
彼のお父さんが、税金を滞納して給料を差押さえられ、家計が大変だという。
すっかり同情して、プライベートなことではあるが、思わず、お父さんに携帯電話でアドバイスしてしまった。
私にはかなりの借金があり、一昨年には会社が危機的な状況に陥った。借金とか滞納には年がら年中つきあっているので、黙っていられないのだ。
私の経験からいうと、一番滞納してはいけないのは、税金と社会保険だ。
これを滞納すると、すぐに「差押さえ通知」が送られてくる。
私は一昨年、生まれて初めて受け取って、そのあと立て続けに3通来た。
差押さえは、まず、事務所の敷金あたりから始まる。そして次は、商売相手からの支払い金だ。
私の知り合いは、税務署から督促がきたが軽視して、1ヶ月の海外出張に行き、帰ったら、仕事をした某民放局で、予定支払い金が差押さえられていたという。
怖いのは銀行ではなく、税務署と社会保険事務所なのである。
私は、銀行への返済を優先し、税金と社会保険をほっておいた。これは多くの人がやる間違いである。
まず、税金は2ヶ月払わないと14.6%の延滞金が発生する。これは銀行金利よりはるかに高利だ。
さらに、税務署や社会保険事務所は、驚くほど簡単に「差押さえ」を実行する。
財政危機で、税や社会保険の不払いが多いと批判にさらされるご時勢、彼らは容赦をしない。
私は税務署に行くたびに議論する。
「うちの会社も従業員もこれまで10年以上税金を払って国に貢献してきたじゃないですか。いま、ちょっと苦しいからって、会社を潰したら、スタッフは生活保護になって国に負担をかけるかもしれないでしょう。会社が再生することを支援したほうがお互いに得じゃないですか」
担当は迷惑そうに聞いているが、きちんとした経営計画書を作り、分割での支払いを約束するなどして差押さえを免れた。
税金と社会保険の滞納分を分割返済する一方、銀行には私個人のローンも含めて返済を待ってもらって会社を再生させつつある。
知り合いのコンサルタントなど経営のプロが知恵をかしてくれたおかげだ。
世渡りには、蛇のような賢さも必要だと切実に思う。
思い返すと、一昨年の秋は、本当に金銭的に追い詰められていた。
娘たちから「パパ、いつまでこの家でくらせるの?」などと聞かれて、「引越しも楽しいよ」などと答えていたものだ。
万事窮して、ある人に相談にいった。
そこに待ち受けていたのは、まるで映画のような顛末だった。
コーヒー代として30万円をいただいたのだ。(つづく)