圧制を続けざるを得ないジョンウン

takase222011-12-29

写真はこないだオフィスに来た、将軍様の料理人、藤本健二さん。
バンダナとサングラスでテレビに出てくる怪しいおじさんだ。
03年に藤本さんがカミングアウトして証言を始めるまで、金正日の家族についてはほとんど知られていなかった。
彼によって、高英姫(コ・ヨンヒ、在日朝鮮人の「帰国者」)という妻に、ジョンチョル、ジョンウンという息子、ヨジョンという娘がいることが明らかになった。当時、韓国の国家情報院もそのことを知らず、批判を受けたと聞く。
藤本さんが北朝鮮に渡ったのが1982年。そこから2001年まで一時期をのぞいて17年北朝鮮に滞在。労働党員にもなり、金正日だけでなく二人の「王子」の遊び相手にもなったという。
はじめ、ジョンウンは「正雲」という漢字があてられていたが、韓国統一省が一昨年10月、北朝鮮のスローガンの文字から、ジョンウンの「ウン」に対応するハングル表記を変更すると発表した。「雲」も「恩」も日本人には「ウン」と聞こえるが、違う発音なのだ。そして去年10月、北朝鮮が、漢字表記は「正恩」だと発表した。
北朝鮮の「最高司令官」は、最近ようやく名前が確認されたばかりなのだ。
藤本さんは北朝鮮滞在中、克明にメモを取っており、その証言は非常に詳細で貴重である。だが、「リーダーシップのある正恩王子がトップになったら、きっと北朝鮮をいい国に変える」という意見には賛成しかねる。
藤本さんは、正恩が、スイスに留学して海外事情をよく知っていることや、日本やアメリカに対してよい印象を持っていることを強調する。
しかし、北朝鮮の体制においては、指導者の性格や好みや知識で政策が左右されるわけではない。
金正日自身、日本の映画をはじめとする外国のメディアにはよく目を通し、煙草も酒も洋物が好きだったが、一方で、外国のビデオを見た国民を秘密警察に捕まえさせてきたのである。
金正日が、何度も訪中して経済発展の成果を見学したことから、専門家の中には、北朝鮮でも「改革開放」を取り入れるだろうと予測した人もいた。しかし、実際には、金正日は、ごく温和的な「改革」までも拒否して、09年のデノミのように市場と貨幣経済の弾圧に出たのだった。いま、北朝鮮の民衆が、「ここ十数年で最悪」という生活をせざるを得ないのは、この反市場経済の悪政のせいである。
ソ連ゴルバチョフは、統制を一気に緩めるグラスノスチを導入した。その結果が、ベルリンの壁の崩壊と東欧・ソ連における体制転覆だった。
北朝鮮でこんなことをしたら、体制は一気に崩壊し、ジョンウンは民衆によってカダフィのように扱われるだろう。ジョンウン「最高司令官」が、自分を危険にさらすことになる政策を採ることはありえない。
政治的自由を制限し共産党専制を維持したままの中国式「改革開放」にさえ、父親と同じく、尻込みすると私は見る。
結局、祖父、父親の全体主義体制をそのまま踏襲し、人民弾圧を続けるだろう。