家族をも秘密にした金正日

takase222011-12-24

朝、「ウエークアップ」に石丸次郎さんがスタジオ出演しているのを見てから、久しぶりに、たぶん2月ぶりに、長めの散歩をした。
こないだ、血液検査の結果が、医者が顔をしかめるほど悪かったのを思い出し、運動しようと思い立ったのだ。
散歩についてきた娘が嬉しそうに道端の土を踏んでいる。見たら霜柱ではないか。「おー、霜柱だ。今年はじめて」と声をあげたら、もう十日くらい前にも霜柱が立ったと娘は言う。本格的な冬なんだな、当たり前だけど。
空気はひんやりで、いい天気だ。公園で逆光のもみじ。

21日、いきなり、知らない韓国の映像プロデューサーから電話があり、金正日死亡に関する50分番組を作るので助けてくれという。
私を彼に紹介したのが、信用のおける人だったので引き受けたが、どこのテレビ局かと聞くと、ある大手新聞社が作った新しい局だった。12月1日いっせいに開局した4局の一つだ。
《韓国で1日、大手新聞社が経営するテレビ局が一挙に4局もスタートする。これまで禁止されていた新聞社による放送局兼営が法改正で可能になったため。この結果、テレビ界は業界拡大で日本からの“番組輸入”が増える見通しだ。日本のテレビ界は“韓流”に対抗する“日流”の売り込みに拍車がかかりそうだ。
 今回、開局するのは朝鮮日報中央日報東亜日報の大手3社を含む4社。いずれもケーブルテレビ局だが、韓国ではケーブルテレビの契約者は全世帯の80%以上で、国民のほとんどが視聴できるため影響力は大きい。
 新局は従来のケーブルテレビ局とは異なり報道、娯楽、教養、スポーツなどすべての分野を放送内容とする「総合編成チャンネル」。これまでテレビ界を支配してきた地上波のKBSやMBC、SBSとほぼ同じ編成で全面的な競争関係に突入する。
 韓国のメディア界は全斗煥政権下の1980年、「言論統廃合策」で新聞の放送兼営が禁止された。これが約30年間、続いたが今回やっと解禁となった。
 総合メディア企業として影響力拡大と経営安定を狙う大手新聞社は早速、総合テレビ局として認可を得て開局にこぎつけた。
 大手3紙のテレビ局は朝鮮日報が「TV朝鮮」、中央日報が「jTBC」、東亜日報が「チャンネルA」。業界筋によると、このうち「サムスン財閥」をバックに昔、地上波のテレビ局を所有していた中央日報系の「jTBC」が最有力という》(産経【ソウル=黒田勝弘】)
新しい局は人材も映像素材も一から集めなくてはならないから、北朝鮮の一大事に、どたばたしているのだろう。電話を受けた翌日22日、プロデューサーがおっとり刀で来日した。北朝鮮に関する番組を作るのに、韓国から日本に取材にくるというのは、意外に思われるかもしれないが、日本には、金正日の料理人だった藤本健二さん、アジアプレスの石丸次郎さんなど、キーパースンがおり、重要な情報がいろいろあるのだ。
おととい、藤本さんをオフィスに招いて韓国のプロデューサーに紹介したさい、北朝鮮のテレビ映像に出ていた弔問者の若い女性が誰かを聞いた。金正恩の妻か恋人ではないかという憶測があったからだ。藤本さんは、正恩の妹、ヨジョンだと断言する。
ヨジョンは姿を見せたのに、正男(ジョンナム)と正哲(ジョンチョル)の二人の兄がいない。少なくとも映像からははずれている。
金正日の家族関係は国民に対しては徹底して秘密にされ、金正日の妻は誰か、子どもが何人いるかも知らせていない。いきなり2年ほど前に、正雲が登場してはじめて、ほとんどの国民は金正日に息子がいることを理解した。一部の幹部以外は、正男、正哲の存在自体を、今なお知らされていない。もちろん、2001年に正男が成田空港で捕まったことや、正哲が、エリック・クラプトンの演奏を聞きに外国旅行していることなども。
これから「実は兄が二人いた」と国民に知らせることは、体制の論理からすれば、不必要であり、むしろ有害である。
金正日の息子は正恩だけということにして、二人の兄はこのまま、公的な場には現れないのではないか。
きょうのニュースで、正恩に父親と同じ「将軍」「最高司令官」の肩書きがついたと報じられたが、権威の確立を急いでいるようだ。
しかし、3代世襲など成功しないだろう。また、成功させてはならない。