分かれる放射能の影響評価3

月末といえば資金繰り。
ブルーになるが、「お互いさまだよ」と支払いを待ってくれる人や、「あるとき払いで」とお金を融通してくれる人がいたり、情けが身にしみる時期でもある。
きょうは、月末の金曜日。今月も何とか乗り切って一息ついた。一杯やらなくちゃ。
きのうの続き。
チェルノブイリ」の犠牲者が、すでに死亡した60人に、将来がんで死亡する可能性のある人をあわせた合計で、わずか4000人。
IAEA主導の「チェルノブイリ・フォーラム」の報告に対しては、さまざまな批判が寄せられた。
一つは、これまでの犠牲者数が60人というのは事実ではない、少なすぎるという批判。
例えば、60人のうちには、子ども甲状腺ガン死9人がある。
甲状腺がんは、ほかのがんに比べて致死率がとても低いので、少ないのはありうるのだが、
これに数えられていない死者がいると、今中哲二京大助教は批判する。
「(9人の)内訳は、ベラルーシ8人、ロシア1 人となっていて、不思議なことにウクライナがなかった。私は、昨年10 月にウクライナキエフの内分泌研究所を訪問する機会があった。その病院の話では、子どもの甲状腺ガンはこれまでに約400例で、そのうち約15 例が死亡した、とのことだった。つまり、ウクライナで子どもの甲状腺ガン死がなかったのではなく、フォーラムが『確認していなかった』だけであった。」
これは説得力ある批判だ。
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No110/Kagaku2006.pdf
その15例が、本当に全員、自殺や交通事故死ではなく、がんが死因だったかどうかと、さらに突っ込んでいくことも可能だが、私の取材実感からいっても、ウクライナの小児甲状腺がん患者に、一人も死亡者がいないというのは考えにくい。
現に、私がウクライナを取材していたとき、甲状腺がんで娘(事故当時は12歳)を亡くした女性にたまたま出会っている。
YouTubeで観られます。http://www.youtube.com/user/takase22/「がんと生きる被ばく者の涙」)
すでに亡くなった犠牲者60人という数には、「もれ」がある可能性が高い。実数はもっと多いだろう。
次は、将来のがん死可能性だ。推定するさいの対象集団の採り方が、フォーラムの60万人ではあまりに狭いという批判がある。
IAEAと同じ国連の組織でも、「国際がん研究機関」は、欧州全域の5億7千万人のなかから1万6千人の犠牲者が出る可能性を見ている。
全体として、フォーラムの犠牲者見積もりは、かなり「控えめ」だと思う。
さらに根本的な批判として、がん致死の係数(0.11)が低すぎるというものがある。
だが、これは何ともいえない。
低線量被曝の影響は、がんなどの発症が10年、20年後と、非常に長期に及ぶこともあって、疫学的に解明されていない。
原発の立場の研究者や機関からは、チェルノブイリ汚染地から、がん、白血病はもとより、さまざまな疾患が増えている、さらには遺伝的な影響も出ているとの報告が寄せられている。
次は、これへの批判も見ていきたい。
(つづく)