菅降ろしに原発の影?

今朝の朝刊に、政府の国家戦略室がまとめた「革新的エネルギー・環境戦略」の素案が明らかになったという記事が載った。
東京電力福島第一原発の事故を受けた今後の政府のエネルギー政策の方向性を表したものだが、「重要戦略」の一つに原子力を明記。事実上、原発推進路線を堅持する姿勢を示した。
 菅直人首相は、原発事故をきっかけにエネルギー政策を「白紙から見直す」ことを表明。見直し作業は、エネルギー政策を担当する経済産業省ではなく、国家戦略室が事務局の「新成長戦略実現会議」に移した。この会議のもと、国家戦略相を議長とする「エネルギー・環境会議」を近く発足させる。(略)
 国家戦略室がまとめた素案によると、福島第一原発事故を受け、「エネルギー・環境会議」が「踏まえるべき基本方針は何か」としたうえで、重要戦略に、省エネルギー再生可能エネルギー、電力システム、原子力など六つを列挙した》(朝日新聞
これまでと同じ路線だ。菅首相自らが可能性を示唆した発電と送電の分離も触れられていないという。
改革構想がどんどん尻すぼみになっていくようだ。なぜなのか?
東京新聞が「菅降ろしに原発の影」という興味深い記事を掲載していた。
《今回の「不信任案政局」を振り返ると、菅首相原子力政策の見直しに傾斜するのと呼応するように自民、公明両党、民主党内の反菅勢力の動きが激化していったことが分かる》
との書き出しで、5月6日の浜岡原発の停止要請からはじまる菅首相の発言と自民・公明の菅降ろしの動き。民主党内では、小沢氏と、地元福島で原発を推進してきた渡部恒三最高顧問の接近。経団連の米倉会長による、発送電分離の可能性にふれた菅首相の発言などへの批判。これら一連の動きに「原発」がかかわっていると記事は示唆している。
そして記事は、金子勝慶大教授の思い切った推測を引用している。
「人気取りかもしれないが、菅首相は自公や財界が一番手を突っ込まれたくないところに手を突っ込んだ。自公は事故の原因が自分たちにあることが明らかになってしまうと焦った。それにそれを小沢氏があおったのではないか」

電力業界とはそれほど力を持つものなのか?
財界ではもちろん主流だった。
東電社長・会長を歴任した平岩外四氏が、1990年に経団連会長に就任して以来、東電の歴代社長が経団連の副会長ポストを「定席」にしてきたことはよく知られている。経済同友会の代表幹事には、木川田一隆氏(東電社長・会長)が10年君臨したのち、やはり東電社長が副代表幹事に就任してきた。
取引のある業界は広く、大手銀行とも強いパイプを持つから経済界での影響力は巨大なものがあったろう。
東電人脈は労働界をも仕切ってきた。
きのう死去した、01年から05年まで連合のトップだった笹森清元連合会長(70)は、東電労組出身で、電力総連の会長をつとめた。
この人は政権交代に大きな役割を果たしたとされ、昨年10月からは内閣特別顧問を務め菅首相の「指南役」といわれた。同時に、小沢氏はじめ多くの政治化と親しかった。
今後の動きを、電力と権力という視点から注意してみていきたい。