引越しのちテレビグランプリ

おととい、六本木のオフィスから引越し。
このオフィスには12年いた。
思い出がたくさんある。強烈なのは、最後の北朝鮮タブーと言われた朝銀のスキャンダルを暴いたときのこと。放送当日、オフィスが総連の抗議団に取り巻かれたことはすでに書いた。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20090805
http://www.jin-net.co.jp/sakuhin6.htm
翌日からファックスと電話が途切れない。抗議ファックスは200通以上来たし、ハガキ、手紙も届く。
一番疲れるのが抗議団で、毎日やってきた。朝鮮学校の教職員グループ、関東地方の県の総連職員などが、数人づつ時間をずらしてやってくる。たぶん、計算して波状攻撃しているのだろう。居留守を使うと楽なのだろうが、私はあのとき、責任者としてきちんと対応することにしていたから、1グループに最低2時間くらいづつ議論した。1週間くらい仕事にならなかった。
「間違っているところがあったら、具体的に指摘してください。再取材しますから」と言うと、「はじめから最後まですべておかしい」と相手が答える。そんな問答を繰り返し、最後は「あんたのような人とは話ができない!」と抗議団が席を立つ。この「儀式」があって抗議団は帰っていったものだ。
タブーとされたテーマでは、食肉疑惑を取り上げた特集で、部落解放同盟ともめたこともあったし、捕鯨反対には政治的なウラがあるという番組を作ったこともあった。捕鯨問題では、なんとイギリスの環境NGOがうちのオフィスまで、抗議にやってきた。反捕鯨団体の根性はすごいと驚いた。
思い出に浸る間もなく、神田の新オフィスで、どたばたが始まった。結末で、きのうから資金繰りでてんてこまい。
朝銀行振り込みをチェックして、午後、六本木でいま爆発的に売れている「戦場カメラマン、渡部陽一」さんのマネジャーと打ち合わせ。
おととい、ほんとうに久しぶりに渡部さんに電話した。携帯にかけると「ワタナベ ヨウイチです」とあの声に続いて「高世さんお久しぶりです」という。驚いて「何年もごぶさたなのに、どうして私だとわかったの?」と聞くと携帯に登録していたとのこと。彼がうちのオフィスに遊びにきたのは、もう7〜8年前のはずだ。如才ないというか義理堅い人である。
午後4時から六本木ヒルズで、「ATP賞テレビグランプリ2010」の受賞式。ATPとは、全日本テレビ製作社連盟、番組プロダクションの連合体である。
毎年、ドキュメンタリー部門、バラエティ部門、ドキュメンタリー部門の3部門の最優秀賞作品から、加盟社が1票を投じて合計数でグランプリを決める。今年は、ドラマの「八日目の蝉」(NHK放送)がグランプリに輝いた。
http://www.atp.or.jp/newsrelease/show.php?subaction=showfull&id=1288354513&archive=&start_from=&ucat=1&
私もプロダクションの代表として1票を投じる権利があった。今年は私もこの作品に入れた。結果は「八日目の蝉」が41票、ドキュメンタリー部門最優秀賞の「二本の木」が32票、バラエティ部門の最優秀賞「タイムスクープハンター」が20数票だった。結果には満足した。これは素晴らしいドラマだった。きっと再放送すると思うので、ぜひ見ていただきたい。人の喜びと悲しみが凝縮されている。