総選挙で露呈するアフガン政府の実態

アフガンは総選挙の投票日だ。
今朝の朝日新聞カブール発の記事はこう伝えている。
「アフガンの治安状況はこの5年で一変した。NGOの集計によれば、06年1月に81件だった武装勢力による攻撃は今年6月には1319件に増加した。国連によると、国内の3割の地区では、非武装の役人は攻撃の対象となり、安全に行き来ができなという」
「アフガンでの選挙の投票者数は、04年の大統領選では810万人だったが、その後、05年の総選挙が640万人、昨年の大統領選が480万人と回を重ねるごとに減少している。治安悪化や政治不信が要因だが、今回はさらに減る可能性も指摘されている」
今回の選挙は、アフガン中央政府の統治力のなさを暴露することになるだろう。
日本は外交下手と言われるけれども、カンボジア内戦を収束させるうえでの日本の役割は非常に大きかった。私は、アフガンでも日本外交の出番を、と期待していたのだが、今の情勢を見るに、手を出せる条件はないと思うようになった。
カンボジアの場合は、ポルポト派を倒したヘンサムリン政権の全土支配が10年揺らぐことなく続いたうえに、内戦を戦った4派のスポンサー(ヘンサムリン政権のベトナムソ連ポルポト派の中国、シハヌーク派・ソンサン派の欧米)やタイ、アセアンも混乱を終わらせようという機運になったところで、日本がまとめ役を果たした。
しかし、アフガンでは、今の中央政府がどんどん力を失いつつあり、周辺関係国とりわけ肝心のパキスタンが、アフガンと連動する形で政情不安になっている。国境を接するタジキスタンなど中央アジア諸国、イラン、中国は、必ずしもアメリカが目指す方向を支持していない。
ここで日本が中央政府側に立って、民生支援に莫大な額のお金をつぎ込むことが、アフガンに何か「決着」をもたらすとはとても思えないのである。
先日、紹介した酒井淑子さんの言うように、「途中で止めないで飽和点まで行ったほうがいい」かも知れない。
日本が世界中の紛争地のなかでアフガンに特別な力を入れている理由は、言うまでもなく、アメリカへの協力を迫られているからだが、その根本を問い直すべきだと思う。
政権交代した今こそ、日本がアフガンに関わる大義と戦略をはっきりさせるいい機会ではないか。