天皇制は悪くない

今週号の『週刊文春』、『週刊新潮』ともに、皇室ものを大きく特集で扱っている。天皇が「愛子さまと会う機会が少なく残念」と言ったと宮内庁長官が会見で語ったのがきっかけになったようだが、相も変わらず、皇室内の家庭紛争、とくに皇太子と雅子さまが皇室で浮いているという話である。皇室行事を休んでいるのに、三ツ星レストランで食事を楽しんだりするのはいかがなものか、といった批判も見受けられる。この手の皇室記事は、もういいかげんにしたらどうか。
私は、皇室を批判するのは「不敬」だ、とか皇室はアンタッチャブルにしろなどと言っているのではない。皇室に本当に問題があったら報道すべきだし、皇室はもっとオープンでいいとも思っている。しかし、ゴシップを探す手法で皇室を報じるのは、日本にとって「損」だと思うのだ。日本人は皇室をもっと大事にしたらどうか。
昔インド人の友人に、「日本はモナキー(monarchy)の国だよね」と言われて答えにまごついた。モナキーとは「君主国」という意味。つまり「日本は王制だよね」と聞かれたのだ。たしかに日本は天皇というある種の王様をいただく国家である。しかし、私たちは政体に対する自覚がない。
誰でもいい、「日本は王制ですか」と聞いてみたら、ほとんどの日本人が面食らうだろう。「違います。日本は民主主義です」などと答えるのではないか。しかし、王制の対概念は「共和制」で、日本は政体としては「王制」の仲間なのである。

エコノミストが毎年発表する「民主主義ランキング」(Democracy Index)は、国ごとに選挙手続き、市民的権利など60項目について指数化し、民主主義の達成度に順位をつけるものだが、この上位を見てみよう。http://www.economist.com/media/pdf/DEMOCRACY_TABLE_2007_v3.pdf
1位 スウェーデン  =王制
2位 アイスランド  (共和制)
3位 オランダ    =王制
4位 ノルウェー   =王制
5位 デンマーク   =王制
6位 フィンランド  (共和制)
7位 ルクセンブルグ =王制
8位 オーストラリア =王制(英連邦王国)
9位 カナダ     =王制(英連邦王国)
10位 スイス    (共和制)
なんと上位10位中7カ国が王制!調査対象167カ国のうち、上位28カ国が「完全な民主主義」(full democracy)というカテゴリーなのだが、ここに、ニュージーランド(11位、英連邦王国)、スペイン(16位)、ベルギー(20位)、日本(20位)、英国(23位)など主要な王制の国が軒並み入っている。
では、最悪の方、つまり民主主義とは縁もゆかりもない国々はというと・・・
最下位の167位は毎年指定席で北朝鮮。この国名はご存知、朝鮮民主主義人民共和国で立派な「共和制」。さらに下から順に;
166位 中央アフリカ共和国
165位 チャド共和国
164位 トーゴ共和国
163位 ミャンマー
と「共和制」ばかりだ。下位にはサウジアラビアといったかなり特殊な封建「王制」もあるが、大きな趨勢としては、現状において、「王制の国は民主主義度が高い傾向にある」と一般化してもよいだろう。メディアではあまり指摘されない意外な事実である。
天皇制を持つ日本は、世界で遅れていて非民主的だ・・・私は若い頃こう思っていたが、実際はそうではなさそうなのである。
カンボジアは、親米ロンノル軍事政権⇒ポルポト政権⇒親ベトナムのヘンサムリン政権と共和制が続いてきて、国連主導の民主選挙の結果、シハヌークを国王に戴く「王制」を採用するという決断をした。昔に戻ったわけだ。いま国名は「カンボジア王国」。民主化の行き着く先が王制だったのだ。
ナチズム、スターリニズム文革期の中国、ポルポト政権など「全体主義」が、すべて「共和制」であったのは言うまでもない。
さらに、王制の国々が、世界最高の男女平等や経済競争力を達成していることについては、12月の日記にも書いた。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20071208
すごいぞ王制!
(つづく)