カレーうどんは日本食?

新宿に用があって出かけたら、カレーうどんの専門店があった。
昼時だったので珍しさも手伝って入った。普通のカレーうどん以外に「黒カレー」、「赤カレー」、「とまとていすと」があるくらいでバリエーションは多くない。意外に客は多かった。
20年近く前のある思い出が蘇ってきた。
ボルネオ島にプナン族という先住民を取材しにいったときのこと。当時はまだ、完全な狩猟採集のみのプナン族がいた。今いる場所で食物を食べ尽したら次の場所に移動するので、居場所を探すのが一苦労だった。ガイドを頼んだ先住民と野営しながら森を歩いていく、キャンプのような取材行だった。即席麺と米が主食で、おかずは持参した缶詰に、その辺の野草やガイドが捕った小動物を油でいためて食事をとった。これが何日も続くと飽きてくる。
日本人は3人で、私とカメラマン、そしてベテランの報道写真家Oさんだった。日本に帰ったらまず何を食べるかという話題で盛り上がった。
Oさんが「長い出張のあと、帰国すると決まって食べるものがあるんだ。これこそジャパンという食べ物が」と言う。寿司かな蕎麦かなと思っていたら、「カレーうどん」という答えに意表をつかれた。
カレーうどんこそ、ジャパニーズですよ」とOさん。
考えてみれば、たしかに一理あると思う。
うどんの起源は諸説あるにしても、チャイナから来たことは間違いない。一方、カレーはインド。今、世界の経済成長を支える二つの大陸に出自をもつ材料が、鰹節だしの醤油スープで合体している。外から来たものを取り込んで、似ても似つかぬ別物に仕上げたあたり、とても日本的と言える。
これ以降、カレーうどんを食べる頻度が増えた。
おととい、カレーうどんを改革しようという業界人の集まりがあったという。どうでもいいニュースではあるが、目に留まったので紹介する。
知名度の割に食卓に上る機会が少なく、カレーライスと比べ存在感の薄い「カレーうどん」。その消費拡大を狙い、業界の有志が立ち上げた「カレーうどん100年革新プロジェクト」の発足発表会が21日、都内で開かれた。昨年末の「年明けうどん」に次ぐ新たなうどんの食べ方を提案し、伸び悩むうどん市場の起爆剤にしたい考えだ。
 「カレーライスは日本で大きく進化してきた。ところがカレーうどんは、カレー業界とうどん業界の両方でキワモノとされ、誰も注目してこなかった」。発起人のカレー総合研究所代表取締役井上岳久氏は指摘する。食卓に登場する頻度も、カレーうどんはカレー料理全体の1割にも満たないといい、「カレーライスの残りをカレーうどんとして食べることが多く、積極的に作ろうとはしない」(ハウス食品の宮戸洋之マーケティング企画推進室次長)のが現状だ。
 カレーうどんの発祥には諸説あるが、東京・目黒のそば屋「朝松庵」が1910年にカレーうどんをメニューに加えたのをきっかけに、全国に広まったとされる。現在食べられているカレーうどんも、当時の味からほとんど変化がないといい、調理法や具材のバリエーションの乏しさは否めない。
 「100周年」を機に立ち上げられた同プロジェクトには、ハウス食品のほか製麺業界団体や料理研究家らが賛同。今年1年間、4回にわたり「革新カレーうどん」と銘打ち、「汁がはねる」という問題や栄養面に配慮した新しいカレーうどんのレシピを発表する。カレーうどんに適した麺などの商品開発、カレーうどんによる町おこし支援なども行うという。
 この日は「第1回革新カレーうどん」として、料理研究家の「こうちゃん」こと相田幸二氏が考案した「イタリアンカレーうどん」や、うどん店「ごえてん」(横浜市)店主の木村義之氏が考案した「冷製カレーうどん」など5品が振る舞われた。1世紀ぶりの“カレーうどん改革”は実を結ぶか−。》(サンケイビズ1月21日)
悪いけど、これらの改革メニューは食べたいと思わない。