先が見えないアフガン1

20日がアフガンの大統領選挙投票日で、ここ数日、新聞・テレビではアフガン特集が組まれている。一言でいえば今の状況は非常にあやうく、心配である。
どの調査をみても、タリバンの力が復活したこと、治安が悪化していること、中央政府のコントロールが弱まっていることが共通している。先月の外国軍の死者は76人で、2001年の戦争開始以来最悪になったと報じられた。また、ケシの栽培が蔓延し麻薬生産が最大になっているといわれる。どんどん破局に向かっているように思われる。
カルザイ大統領は「カブール市長」と揶揄されているという。首都しか支配していないという意味だ。だが6月にはカブール郊外の米軍基地までが攻撃されたし、首都の中でさえ安全ではなくなっている。今月は;
15日=《カブールの国際治安支援部隊(ISAF)司令部前で15日朝、爆発が起きた。自動車を使った自爆テロとみられ、警察によると少なくとも7人が死亡、約90人が負傷した。死傷者には通行人のほかISAFの兵士も含まれている模様。旧支配勢力タリバンがロイター通信に犯行を認めた。》(毎日)
18日=《カブール東部で18日、爆弾を積んだ車が多国籍軍の車列に突っ込む自爆テロがあった。AP通信によると、国連の現地職員を含む7人が死亡、50人以上がケガをした。反政府勢力「タリバン」が、「外国軍の車列を狙った」との犯行声明を出している。》(NTV)
19日=《カブールで19日、武装グループが市中心部にある銀行を襲撃し、立てこもる事件があった。警察と治安部隊が銀行を包囲、突入し、銃撃戦の末に武装した男3人を射殺。警察当局は、旧支配勢力のイスラム原理主義組織タリバンのメンバーとみており、タリバン側も犯行を主張している。》(AFP)
タリバンの支配地は国土の3割とも半分とも言われている。
18日の毎日新聞の「岐路に立つアフガン」(上)は、首都のあるカブール州の中でさえ、《国の裁判所を避け、タリバンが運営する「法廷」を頼る人々が急増している》という深刻な事態を伝えている。ある市民によれば、強盗にあっても警察に被害届けを放置されたが、タリバン法廷に訴えたところ、「すぐに犯人グループを逮捕し、顔にタールを塗って市中を引き回した。その後、強盗事件はなくなった」。こうして、国の警察・裁判所のわいろ体質、不公正、非効率に国民が愛想をつかし、迅速、公平なタリバンの司法になびいているという。ここまで来ると、問題は軍事力ではなく統治能力でもある。結果、《国土の8割》がタリバンに掌握されていると記事は書いている。http://mainichi.jp/select/world/news/20090818ddm007030118000c.html
アメリカにとってのアフガンは、かつてのベトナムのように「泥沼」になるとの予言があったが、まさにそんな様相になってきた。ベトナム戦争中、南ベトナムのほとんどの村が、昼は政府軍が、夜はベトコン(民族解放戦線)が支配する二重支配地域になったが、アフガンの現在はこれを想起させる。
反米勢力への住民の強い支持、腐敗して力のないアメリカの傀儡政権、終わりの見えない戦闘と外国軍の戦死者の増加・・・ベトナム戦争のデジャヴーである。
(つづく)