北朝鮮の市場圧殺策はどうなる?

きょうは、サンプロ特集でスタジオ出演だった。
特集は《北朝鮮で何が―”南北絶縁宣言“の真相》。内容は;
〔「全面対決態勢へ突入する。」
今月17日、北朝鮮が突然発表した、韓国への“南北絶縁宣言“。
前代未聞の声明を出した“本当の”理由とは何なのか。
そこには、連日韓国から海を越えて飛ばされる風船の存在があった。
その風船に結ばれている大量のビラ。北朝鮮人民の知り得ない、重大な“事実”が書かれていたのだ。・・・〕http://www.tv-asahi.co.jp/sunpro/
北朝鮮は去年11月末に開城(ケソン)観光を中断、南北を結ぶ鉄道「京義線」の運行を中止したうえ、韓国企業88社が進出し北の労働者3万人を雇用する南北経済協力の要、開城工業団地の活動に大きな制限を加えた。外貨収入を自ら断って韓国と”絶縁“した。その背景を探るという趣向で特集を作った。
北朝鮮当局は、ビラに対して、我々の想像以上に危機感を持っているようだ。金正日の私生活だけでなく病気について書いていることが決定的だったようだ。
「重病説」が噂で広がるなか、韓国に対しては対決姿勢を強める一方で、厳しい統制で国内を強烈に締め付けようとした。ジャーナリストの石丸次郎さんは「統制の嵐」と表現したが、その言葉はそのまま番組でも使わせてもらった。
今まで見逃されてきた無許可営業の路上市場を取り締まり、女性がズボンを着用したり、自転車に乗ったりすることまで「糾察隊」が摘発するという事態になっている。80年代に北朝鮮では、「女性はズボンを履かないように、自転車に乗らないように」という指示があり、ながく有名無実化していたのが「復活」したのだ。
今回、最も注目したのは、路上市場だけでなく合法市場である「総合市場」を事実上解体するかのような方針を当局が示したことだ。
北朝鮮には、大きく「国営商店」、「総合市場」とそれ以外の路上市場のような無許可営業がある。総合市場は、拡大した闇市を取り締まることができなくなった北朝鮮当局が場所を決め、場所代を取って合法化した市場だ。総合市場では、農作物から中国などから入ってきた洗剤、衣類、靴、化粧品などあらゆる日用品、何でも売られている。
ところが、去年10月、海州(ヘジュ)という町の総合市場には、とんでもない告知が張り出された。そこには、「2009年1月から、市場で販売できるのは、個人が作った野菜などに限る」と書いてある。具体的には、総合市場の売り場をほとんど国営商店にしてしまうというのだ。その場合、国営商店の運営は、幹部などの特権層とその家族に独占されるだろう。こんな指示を実行に移されたら、商売している人々は生活の糧を失ってしまう。
いま北朝鮮の人々の最大の関心事がこの告知で、戦々恐々だという。
国家による流通機能が完全に麻痺した北朝鮮で、こんな告知を実行することは最初から不可能だ。だが、締め付けが強まる時期になると、流通を市場から国家の手に取り戻そうという動きがでてくる。
要は北朝鮮が「改革開放」に背を向けているからなのだ。中国やベトナムなどが市場を積極的に活用する方針なのに対して、北朝鮮は、禁止できなくなって「仕方なく」市場を認めたのであって、市場は本来好ましくないものなのだ。
それにしても、今回の告知はこれまでの「統制」とはレベルが違う。本当にやろうとしたら破壊的な影響が出る。商売をする多くの市民の現金収入が断たれ、モノが出回らなくなり、すぐに食糧危機になる。
はたして今年1月から、この告知が実行に移されるのかどうか、私はこれに一番注目している。